アメリカ西海岸、ロサンゼルスを拠点に活躍しているジャーナリスト、ケニー中嶋のステイホーム生活は、長年の愛車とゆっくり過ごす絶好の機会になったようだ。
この春、突然やってきたステイホーム生活。不自由も不安なこともあるけれど、僕の巣ごもりライフは意外と(かなり)楽しかったりした。
いちばんの喜びは、ガレージで思う存分愛車いじりができちゃうこと。忙しさを言い訳に、長きにわたり十分手を入れてやれずにいた“Datsun Roadster“と思う存分過ごす時間は、まさに至福であった。
僕の1968年型“Datsun Roadster“は2リッターのSRではなく、1.6リッターOHVのSPL311。日本では日産フェアレディ(SP311)が正式名称だが、北米では80年代までブランド名が“DATSUN”(ダッツンと発音)。「フェアレディ」の名称は使われず、正式名は「スポーツ1600」だが、一般からオーナーズクラブまで「ロードスター」が通り名だ。
大学に進むためカリフォルニアにやってきた小僧の僕が真っ先に調達したのは、エンジン付きの「足」。漫画「バリバリ伝説」の影響もあり、まず手に入れたのがホンダCB900F。その後出会ったのがこの“Datsun Roadster“だ。60年代の2シーターコンバーチブルに憧れ、中古市場に多く出回っていたSPL311の中から選びに選んで、個人から1,400ドルで購入した。毎日大喜びで乗りまわし、細かい故障はDIYで修理、徐々にレストアを進めていた。
やがて社会に出て結婚し、クルマに手をかける時間をみつけることが難しくなって、ロードスターは長らくガレージに眠っていた。カリフォルニアでは雨風がしのげて、乾燥状態をキープできるエンクローズドガレージが各家庭にあり、工具を揃え、部品を買って自分でいじるのが一般的。ガレージのおかげで30年前にオールペイントしたエナメルも色褪せない状態を保っている。
エンジンはこれまでに2回オーバーホールしている。神経質なSOHCの2リッターではなく、商用車にも使われたOHVの1.6リッターエンジンはDIYで弄るのに持ってこいだ。ミッションは最近OHしたSR用の5速に載せ替えている。下の写真がその時の様子。
ここカリフォルニアでは、登録費用や保険料が年を重ねるごとに新車よりも安くなるという点もありがたい。車検がなく、25年以上前のモデルは排ガス検査が不要になる。趣味の旧車を所有・維持するハードルが低いのだ。ネットを駆使して社外品や互換性のありそうな部品を試してみたり、自作して費用を抑えたりするのも、旧車レストアの楽しみだ。
ステイホーム生活はさながらロードスターとの再びの蜜月。近所には自分で愛車をいじる同好の士も多く、あちこちのガレージがにわかメンテナンスショップになっていた。
ケニー中嶋/Kenny Nakajima:
東京生まれ、南カリフォルニア在住。クルマはもちろん、自転車からスペースシャトルまで、幅広い守備範囲が自慢のジャーナリスト。
昨年初めて旧車オーナーとしてJCCS(ジャパニーズ・クラシックカーショー=日本旧車集会)に参加。上の写真で手にしているライセンスプレートの「長浜」は、開催地であるロサンゼルスの“Long Beach”(ロングビーチ)にちなむ。
photo&text: Kenny Nakajima