「NASCARの基礎知識」タイヤ&ホイール編

NASCARドライバー尾形明紀監修による「NASCARの基礎知識」。今回はNASCAR(ナスカー)ストックカーレースのタイヤ&ホイールのお話し。アメリカ最高峰のレースであるにも関わらず、そのホイールがブラックにペイントされたスチール製であることはご存知の方も多いはず。でもあのホイールやグッドイヤータイヤにも、いろいろトリビアがあるのだ!

まず上の写真をご覧頂きたい。NASCARではスチール製ホイールを5本のラグナットで取り付けるスタイルを守っている。用意されるニュータイヤのホイールには何とラグナットが接着されているのだ!表面に貼られたテープでナット位置が一目でわかり、素早いタイヤ交換が可能になる。またエアバルブ位置を目立たせるため、周囲にシルバーのペイントがされている。グッドイヤータイヤがEAGLEではなくWRANGLERなのは、キャンピングワールド・トラックシリーズ用のタイヤだから。

ほとんどのレースが左回りのオーバルで開催されるため、マシンにスタッガーと呼ばれるセッティングを施す。左右のタイヤに外径差をつけるなどして、安定したコーナリングを可能にするのだ。しかし、タイヤサイズは4本とも同じ。クルーは事前にタイヤの外径やタイヤ表面の穴の深さを測り、個体差をチェック。大きなタイヤをアウト(右側)用とし、さらに空気圧で調整。タイヤチョイスはシャーシ、サスペンションセッティングと同じぐらいシビアだ。

上の写真の見慣れないタイヤは何か。タイヤは2重構造で、これはインナータイヤ。 タイヤがパンクしてホイールから脱落しても、LIFEGUARD(ライフガード)と名付けられたこいつがあればピットまで帰れる。

上の写真はストックカー用ホイールとして有名なBassett(バセット)。日本ではドラッグレースやストリート用としても有名なWeld(ウェルド)が知られてるが、他にもAERO、Circleなどのブランドがある。NASCAR公式レースで使用出来るのはSFIという基準に適合しているBassettとAEROのみ。他のブランドはNASCAR以外のストックカーレースで使用されている。

下の写真左はピットエリアに多数並べられたタイヤ&ホイール。グッドイヤーは、スプリントカップ、ネイションワイド、トラックレースが同時開催される週末には2,000本以上のタイヤを用意する。
右の写真は、今年5月のメモリアル・デイ(戦没将兵追悼記念日)にシャーロットで開催されたレースに供給されたタイヤ。デジタル・カモフラージュパターンで兵士を称えるメッセージを入れた限定品だ。グッドイヤーの心遣いであり、実にアメリカらしい。

photo&supervisor: Akinori Ogata
文責: ORM編集部

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