日本でルート66気分を味わう!『アリゾナ・ルート66』千葉県木更津市

中央分離帯をもつ片側二車線の通りには少し起伏がある。行き交うクルマは少なく空が広い。右手に目指す建物が見えてきた。ロードサインを模した看板には“ROUTE66 ARIZONA”の文字。その足元にはサボテンが植えられている。まさにアメリカの郊外に残るウエスタン・サルーンといった雰囲気だ。

 『アリゾナ・ルート66』のオーナー石川泰さんは、東京都内で歯科医として活躍中。だからオープンは基本的に週末だけだ。店の横に建つガレージには、ハーレーダビッドソン・ローライダーやフォードマスタング、シボレーのピックアップ、2台のスカイラインなど大切な愛車が収められている。「1966年型のスカイラインS54Aは父から受け継いだクルマ、私の乗り物好きも父譲りです。」バイクには高校時代からで30歳まで乗っていた。45歳でハーレーを購入、ふたたびライダーになった石川さんは、その後ハーレー仲間と5回ほどアメリカをツーリング。その際に出会ったルート66の雰囲気に惹かれ、クルマで全行程も走破するほど、その魅力にハマってしまった。これらの体験が、夢の実現にも結びついてゆく。
 「若い頃から、カフェをやりたいと思っていました。」という石川さん。経営する赤坂の医院が、入居していた建物の老朽化で立ち退きになったのを機に、夢の実現に向けて動き出したのは2016年。「どんな建物にしようかとめくった雑誌の、ルート66特集に掲載されていた一枚の写真に釘付けになりました。その建物がどこにあるのかは書かれていませんでしたが、『ルート66沿いにありそうなカフェ』というコンセプトが一枚の写真で決まりました。」東京からもアクセス良好な千葉県木更津市に店をオープンするための土地を見つけた。決め手は広い道路に面した、アメリカの郊外ような雰囲気だったから。「地元の建築業者さんに相談、私が見せた例の写真の雰囲気を理解して、素敵なスケッチを描いてくれた茂原のGARAGE HAMARにお任せすることにしました。」

(写真左上)雑誌に掲載されていた写真の中のルート66上の建物を参考にお店作りはスタートした。(左下)石川さんの思いを受けて茂原のGARAGE HAMARが描き上げたスケッチ。(右)石川さんのお店の看板には、ルート66の別名『マザーロード』や、起点であるシカゴと終着点サンタモニカの地名も。

 完成したのは、カバードポーチがある旧き佳きアメリカの雰囲気をもった外観。店内は高い天井とL字型のカウンター、階段につながる二階部分の廊下は西部劇に登場するサルーンそのものだ。圧巻なのが壁面を埋め尽くす大量の本。「バイクやクルマの雑誌が中心で、高校時代に愛読していたものもあります。店のコンセプトからはずれているかも知れませんが、壁一面に雑誌を並べるのも夢でした。」店舗名の由来を伺うと、「ルート66の中でアリゾナのウイリアムズという小さな町がいちばん好きなのです。ウイリアムズという名前も考えたのですが、覚えやすい『アリゾナ・ルート66』にしました。」と石川さんは笑顔で教えてくれた。




(写真左上)ハーレーとの出会いが、ルート66に魅せられるきっかけになった。(右上)ウサギの看板は、アリゾナにあるジャックラビット・トレーディングポストから実際の距離を表している。(左下)石川さんが父上から受け継いだオリジナルコンディションのスカイラインS54Aは’66年製!(右下)店内に飾られたウエスタンアイテムは石川さんのコレクションの他、お客さんからプレゼントされたものも。

 店は2019年7月のオープン直後からクルマ・バイク好き、アメリカ好きの間で話題になり、賑わった。しかし昨年から続く社会情勢下ではほぼ休業状態だという。「これを機に思うところあって歯科医の仕事を減らしました。二階に寝泊まりできるプライベートスペースがあるし、今はほとんど木更津にいます。夢だった店とガレージを手に入れ、愛車たちもある。この場所がすごく気に入ってしまい、とても満足しています。」と、石川さんは心から楽しそうな顔でそうお話ししてくれた。

(写真上)西部劇に登場しそうな作りの店内にあって、壁一面を埋め尽くした趣味の雑誌が圧巻!(左下)階段上から店内を見下ろす。高い天井にシーリングファンが回るようすが実にアメリカン。(右下)事前にバイク仲間の喫茶店で修行、店のコンセプトに合うアメリカンなメニューを用意している。

 石川さんが店作りの参考にしたという雑誌に筆者も見覚えがあり、その編集に携わっていた友人に連絡を取ってみた。すると「その建物は2009年1月にアリゾナ州ウィリアムズで僕が撮ったものです。」という驚くべき返事が返ってきたではないか!石川さんは期せずしてルート66沿いの一番好きな町にある建物を、それとは知らずに再現、アリゾナ・ルート66の看板を掲げていたのだ!
 旅は一期一会と言う。そして人生そのものが出会いに満ちたロードトリップなのだと感じている。アリゾナ・ルート66と石川さんのストーリーは、旅先での出会いが生んだちょっとした奇跡と言えよう。次はハーレーに乗ってアリゾナ・ルート66を訪ねたいと、わけもなく思っている。

(写真)ガレージの前に立つ石川さん。壁面に大きく描かれているのは、ルート66全行程の地図だ!

INFO
ARIZONA ROUTE66/アリゾナ・ルート66
千葉県木更津市真舟3-4-2
080-6659-0066
営業日・営業時間はお店にお問い合わせください。

photo&text: GaoNishikawa

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