大手住宅メーカーで営業として勤務した経験と、「自分が住みたい家を作りたい」という夢をうちに秘めて独立。
広告代理店業のかたわら、長年にわたり試行錯誤、“IRON HOUSE TETSUYA”のブランドで『建築用コンテナ』という新しいジャンルを確立した引地努さんを訪ねた。
万国共通規格で作られている『海上コンテナ』は、7段積みも可能、長期間使い続けることができる非常に頑強な構造物。
しかし、あくまで輸送の道具であり、国内では建築物として使用することは公式に認められていないのだ。
「しかし防災、気密性などを考えると、コンテナは住宅やガレージとしても非常に魅力的な存在なのです。工場で作って、施主さんのもとに運び設置するという、建築業界で言う『工業化住宅』にもあてはまり、コストパフォーマンスに優れている。無骨な外観や鉄の質感にも惹かれて、何とかこれを合法的に住宅に活用できるようにしたかったのです。」と語るのは、この“IRON HOUSE TETSUYA”=鉄の家の仕掛人である引地努さんだ。
コンテナのフロアと同等の強度をもつというテラス部分に、ご自慢のハーレーダビッドソンをのせてデモンストレーションしてくれたのが上の写真。
自身が熱心なバイクフリークであり、鉄の家のコンセプトには、初めからバイクガレージとしての活用も考慮されていた。
このスポーツスターのカフェレーサーは現在の愛車。テイストコンセプトモーターサイクルの手によるカスタムだ。
引地さんは、強度をはじめ、コンテナの利点を生かしながら独自に研究・開発・実験テストを重ね、発想から約20年。
この『建築用コンテナ』を生み出し、昨年八王子に、“IRON HOUSE TETSUYA”としてモデルハウスも完成したのだ。
震災以降、耐震安全性に関する意識の高まりとともに、コンテナが安全・快適な住まいになりうるという点に注目が集まっていると聞く。
しかし、仮設ではなく建築基準法に則った、言わば合法的に住居として認められるコンテナハウスは現状では“IRON HOUSE TETSUYA”だけなのだ。
取材日は東京に初雪が降った翌日、非常に寒い日だったが、モデルハウスの中はとても暖かだった。
「これまでたくさんのコンテナハウスを見てきましたが、どれも快適性が今ひとつでした。そこでコンテナに相応しい断熱材を独自開発、サッシなど建具の取り付け方にもこだわり、居住空間としての快適性も追求したのです。僕自身、ここで生活してみたり、仲間を泊めて意見も聞いた上で、このカタチになりました。もちろん頑丈なコンテナ構造ゆえ、地震が来ても机の下にもぐる必要も、屋外避難する必要もない。ここは僕の仕事場でもあり、忙しい時は泊まることもありますが、快適で居心地がいい。とても気に入っています。」
建築用コンテナにこだわるのには、もうひとつ理由があった。それは引地さんがクルマ・バイク好きであるということ。
「愛車と暮らすカッコいい家が欲しかったのです。室内はリビングにもガレージにもなる空間にしたかった。だからフロアも車重300キロ以上の大型バイクが載っても心配ない強度になっています。」と同じ構造をもつテラスに愛車のハーレーを載せてくれた。
無骨な外観はカラーリングで簡単にカスタム可能。
カッコ良くて快適、そして安全・安心が手に入るという建築用コンテナは、住宅建築、そしてガレージづくりにも新風を巻き起こしてくれそうだ。
日当りがよく非常に快適な1階スペース。フロアはバイクガレージとしても使えるよう頑丈に作られており、家具を移動させて、引地さん自身の愛車を収納することもあるそう。ここはショールームであるとともに、取引先や仕事仲間、友人が集う場所。居心地のよさにもこだわっているそう。置かれているテーブルやスツール、カウンター、飾り棚などはすべて引地さんがプロデュース、製作したものだという。
モデルハウスの裏手に設置された外階段で2階にアプローチする。ドア上のひさしにもコンテナの外板素材を使用。
玄関ドアなど木製のオリジナル建具がいいアクセントになっている。
壁面には専用開発の断熱材が内蔵されており、室内の快適性が確保されている。
“IRON HOUSE TETSUYA”での住まい心地を体験してみたいという要望に応えるため、このモデルハウスを活用して体験宿泊の受付も行っているという。
お問い合わせ:
有限会社LIFIX
東京都八王子市元八王子1-419
TEL 042-686-0690
www.ih-tetsuya.com
photo&text: Gao Nishikawa
special thanks: TASTE CONCEPT MOTORCYCLE