日本でつくる、日本人ならではの匠の技術が生みだす。フラットヘッドのジーンズづくり。

今年の春に新調、すでに身体に馴染んでいる履き心地のいいジーンズを身に着けて、僕は長野に向けクルマを走らせていた。このジーンズの生みの親、小林昌良さんに再会するために。

今春、長野のフラットヘッド本社を訪問、創業者の小林昌良さん(写真下)を取材した。お気に入りの愛車である2台のベルエアとともに写る小林さんの姿をこのwebでご覧になった読者も多いだろう。
記事の中でも、ブランドのルーツであるジーンズをつくり始めたきっかけや、モノづくりに対する小林さんの思いについて書いた。しかしその時、実は誌面に納めきれないほど、もっとたくさんの話を聞いたのだった。
モノづくりを生業とする一人として、僕自身共感する部分もたくさんあった。

その後フラットヘッドの直営店、デザートヒルズマーケットにお邪魔して一本のジーンズを手に入れた。
小林さんが生みだしたジーンズを身につけて、その風合いや手触り、穿き心地を試しながら、今度はジーンズについて、もっとお話を聞きたいと思った。

写真上:定番のロットナンバー3005。この写真からでも、旧式シャトル織機によるデニムや、丁寧で高い強度をもつステッチなど、こだわりのディテールが伝わってくる。

「中学の頃、初めて手にしたアメリカ製のジーンズの"タテ落ち"とか"ねじれ"を、不良品だと思ったという話しは前回もしましたね。その後、穿き込むことで生まれるデニムならではの良さが理解できるようになると、それが愛着につながることを学びました。」そう笑いながら、小林さんはデニムとの出会いについて語ってくれた。
好きが嵩じて始めた古着屋を経て、やがて自分でジーンズをつくることを決意した小林さんは、7軒の家内制手工業、いわゆる内職さんをまわって一本のジーンズをつくり上げるという方法にたどりつく。
「当初、大量生産がメインの工場に発注する資本がなかったのでとった手段なのですが。職人さんが担当部分をそれぞれ『世界一のパーツ』として丁寧につくってくれる。この素晴らしいやり方は今も続けています。」
アメリカでワークウェアとして生まれたジーンズだが、ディテールは50年代、タテ落ちは60年代、そして日本人の体格にあわせて股上を浅めにと行った具合に、小林さんならではの知識と発想からフラットヘッドのジーンズは形づくられている。
今では手に入らない旧いミシン、ユニオンスペシャルを大切に使い続けるのも、綿糸を縫うときに最適なテンションの調整が細かくできるから。
「これで縫うと仕上がりがキレイになり過ぎない、独特な味わいが出るのです。」
他にもさまざまなこだわりを詰め込んでつくり上げたのがフラットヘッドのロットナンバー3005だ。
「思い描く完成形に近いのがこの3005であり、フラットヘッドの原点でもある大切な存在です。」
ブランドには変化や多様化が必須だが、このジーンズの本質は変わらない。本質的にいいものは変化しないのだと語る小林さん。
「いいと思えることは手間を惜しまずにやる。おかしいと思うことは修正する。目指すものは常に先にある。ゴールなどない。そして答えは常に変わるもの。作業服ではなくスマートで穿きやすい、私たちはジーンズの第二章を作っているのです。」と小林さんは未来を見据えていた。

小林昌良:
長野生まれ。
国内外のアメカジ好きに絶大な人気を誇るMade in Japanのアパレルブランド、”THE FLAT HEAD”の創業者。
「着る人がヒーローになれる服をつくること」がモットー。
それらを身につけて遊びに行ける場所として、アメリカンダイナー『グーギーズカフェ』やイベント『スーパーウィークエンド』のプロデュースも手がける。


写真上:
一般的なジーンズよりボリュームがあるベルトループは、フラットヘッドならではのディテールのひとつ。中央が立体的で糸が擦れにくく糸切れを軽減する。穿き込むことで独特の風合いも生まれる。

写真左上:
バックポケットの裏側の『隠しリベット』。
強度と美しさを両立するため、リベットの打ち位置をミリ単位で決めて、そのギリギリを縫う。
「いつも職人さんに無理なお願いばかりしています」と小林さん。
写真右上:
ボタンホールは、カットした生地の縁をかがるのではなく、かがった後で内側に穴をあける『後メス』を採用。
ボタンの開閉によるかがり糸の切れを軽減し、愛用のジーンズを長持ちさせてくれるのだ。

デザートヒルズマーケットでメーカースタッフの小林正人さんにアドバイスを頂き、僕はフラットヘッドの原点であるモデル3005のストレートをチョイス。
フラットヘッド小林さんのフィロソフィーが息づく、着るほどに身体に馴染むジーンズは、すでにお気に入りの一着になっている。

photo:Kazumasa Yamaoka
text::Gao Nishikawa
special thanks: The Flat Head
026-275-6666http://tfh.flat-head.com

Related article

関連記事