【静岡・磐田】美味しいスウィーツと、カッコいいキッチンカー。SAYA SWEETS GARAGE

お菓子職人として独立、自分で作ったケーキをキッチンカーに積み込んで、自分の手でお客さんに届けたい。そんな夢をもつ娘と、モノ作りが好きでカッコいいキッチンカーを作ってみたくなった父。その夢が重なり、走り出した。

 「製菓専門学校を卒業、遠州エリアで店舗展開するお菓子屋さんに就職しました。私のキャリアはそこでの2年だけです。」大石紗矢香さんはそう言うが、職人として日々数百個ものお菓子を作っていたというから、その2年間は相当濃密なものだったに違いない。「今日はお昼までにシフォンケーキを20台焼きます。作りながらでいいですよね?」と言いながら、紗矢香さんはずっと手を動かしている。手際のよさは、門外漢の目にもプロフェッショナルのものだとわかるものだった。
 「子供の頃は時々母と料理をしました。お菓子好きなので自分で作ることもありました。でもどちらかといえば食べる方が好きかも。昔も今も。」と笑った。そして手元から目をそらさずに、独り言のようにこう言った。「父のように好きなことを仕事にしたいと思っていました。その方が楽しそうだと…。」いつか独立したいと考えていた。それを口に出したら「やればいいじゃん!」と賛成してくれたのは父だった。
 ある日、紗矢香さんは「シェフ」というアメリカ映画を観た。クビになってしまった三ツ星レストランのシェフが、ポンコツのキッチンカー(移動販売車)に乗って旅に出る…というコメディー仕立てのポジティブなストーリー。観終わった紗矢香さんはキッチンカーに憧れ、自分もやってみたいと思った。同じ映画を観た父は、キッチンカーを作りたいと思った…。
 「どうせ作るならカッコよくないと。」と父が手に入れたのはフォード製のバン、エコノラインのコンバージョンモデル。紗矢香さんの父は、プロの大工。そしてバイク好きが嵩じて自ら設計・製作したバイクガレージを全国のバイク好きに届け、今や全国のバイク好きにその名を知られているダイナオガレージファクトリーの代表、大石博和さんだ。
 「娘の『独立したい!』という夢と、僕の『作りたい!』という思いがたまたま一致しただけなんです。」と、ちょっと照れくさそうに大石さんは言った。「作るからにはカッコよく、そして娘が楽しみながらいい仕事ができるように、一緒に考えながら仕上げました。車内の使い勝手はもちろん、イベントなどの現場での出店準備や撤収のし易さにもこだわりました。」と父が言えば、娘は「クルマへのこだわりは強くないけれど、やっぱりカッコいい方がいい。その部分は父に任せれば大丈夫だから、私は使い勝手の部分でゆずれないところを伝えただけです。」
 そしてこの5月に晴れてデビューしたのが“SAYA SWEETS GARAGE”(サヤ・スウィーツ・ガレージ)と名付けられたキッチンカーだ。メインとなるメニューは紗矢香さんが最も得意とするシフォンケーキ。プレーンの他、ストロベリーやチョコ、抹茶、コーヒーなどのフレーバーがある。ケーキ作りは静岡・磐田にあるダイナオの事務所所在地に新設したスウィーツ工房で。もちろん設備や配置は紗矢香さん自身のプロデュース、施工は大石さんの手によるものだ。
 キッチンカー“SAYAちゃん号”の初出店は、ダイナオガレージファクトリーとして毎年出展しているバイク乗りのための地元のイベント、株式会社デイトナ主催の『茶ミーティング』。好天のもと、用意した160個のシフォンケーキは冷たい飲み物とともに大好評、ほぼ完売した。その後もいくつかのイベントに出店、父の都合がつかない時には母の登紀子さんがキッチンカーのハンドルを握るという。
 「父が作ってくれた使い易くてキレイな仕事場で、私は安全・安心、そして美味しいスウィーツを作り、お客様のいる場所に届けています。今は“SAYA SWEETS GARAGE”を一人でも多くの方に知ってもらいたい、そして食べてもらいたいと思っています。」
 一方、大石さんは、紗矢香さんの仕事をダイナオの新事業としても捉えている。「プロのお菓子職人である娘のノウハウを生かしながら、ガレージ型カフェの製作・提案、それにGAOニシカワさんにもデザイナーとして加わってもらい、キッチンカーの製作も手がけていきます。使い勝手がよくて、カッコいいキッチンカーが欲しいという方は、是非ご相談下さい!」
 自慢の“SAYAちゃん号”の前に立つ親子の笑顔が眩しかった。

お菓子職人の娘がプロデュース、大工の父が作ったいかにも使い易そうなお菓子工房。インタビューを受けながら手際よくケーキを作る紗矢香さんの姿は、まさにプロフェッショナル。

専用のオーブンでじっくり時間をかけて焼き上げていく。膨らんでくるといい香りが漂ってきた!ふっくら美味しそうに焼き上がったケーキはしばらく寝かせてからケーキ型から抜く。
キッチンカーではカットして販売するが、予約制でホールでの販売も可能。要お問合せだ。

フォード・エコノラインのコンバージョンをベースにしたキッチンカー"SAYAちゃん号"。外装デザイン、それにホイップクリームから生まれたマスコットキャラクター"SAYAちゃん"はイラストレーターで本誌編集長のGAOニシカワの手による。

ダイナオガレージファクトリー大石さんの、ガレージづくりとクルマ好きとしての知識、そして遊び心が生きるキッチンカーの内装は圧巻。開店時に展開するパラソルは、設置・撤収が簡単で頑丈に固定できるようトレーラーのヒッチメンバーを活用している。キッチンカーは冷蔵庫や冷凍庫を完備。冷蔵ショーケースの取り付け部分にはスライド金具を内蔵、営業時に外にせり出す仕組みになっている。

SAYA SWEETS GARAGE
サヤ・スウィーツガレージ
静岡県磐田市福田3101-1
ダイナオガレージファクトリー内
090-6593-0066
http://saya-sweets.com

photo: 青木雅美, Dainao Garage Factory, Gao Nishikawa
text: オンザロードマガジン編集部

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