高性能バイク用ウインドスクリーンを作る "af" Asahi-Seiki Inc. 古屋晃男 Teruo Furuya

旭精器製作所で保管されている貴重な1960年代初頭のカタログ。
カラーのカタログは"af"ブランドが誕生した1977年頃のもの。

PRIDE OF JAPANESE CRAFTMANSHIP
Motorcycle Windshield
"af" Asahi-Seiki Inc.
高性能バイク用ウインドスクリーンを作る
古屋晃男 Teruo Furuya

数年前、縁あって愛車のスポーツスターに取り付けることになったウインドスクリーン。
その角には小さく"af"の文字が。
美しい仕上がり、振動対策まで考慮されたフィッティングしやすい取り付けステーなど、日本製ならではの品質に感銘を受けた。

旭風防のNo.99として長年親しまれている同社の代表的なウインドスクリーン。

1955年創業、ベテランライダーにはその製品とともに『旭風防』として知られ、昨年60周年を迎えたバイク用ウインドスクリーンメーカー、旭精器製作所。
"af"は旭風防の略称だ。同社社長、古屋晃男さんを訪ね、お話しを伺った。
「祖父が昭和初期に東京で創業したセルロイド加工業が会社のルーツです。初期の製品はセルロイドの文具、日用品、そして電灯に取り付ける虫取カバーだと聞いています。1950年代後半にはバイク業界の発展性に着目、旭マークのレッグシールド、風防、ヘルメットなどの製造販売を開始。1960年頃にバイク用品の専業メーカーとして株式会社旭精器製作所を設立、風防やサイドバッグ、カウリングなどの製造が本格化しました。」
今も生産が続く同社の代表的な製品は、コットン製のオリーブグリーンのスカートが付いたシンプルな風防。
かつてのプレスライダー御用達アイテムとしてご存知の読者も多いだろう。
その他、警察機関に採用され、白バイのリアに取り付けられていた樹脂製のサドルバッグも、『チャンピオンバッグ』と呼ばれる同社の看板商品である。

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白バイにも装着されていた『チャンピオンバッグ』は今も生産されている同社の看板商品。

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開発するウインドスクリーン本体は、取り付けステーとともに実車に取り付けてテストを行う。
写真はスーパーカブに仮組みを行う開発部の尾亦さん。

一昨年代表取締役社長に就任した古屋さんは、荒川区生まれ。当然物心ついた頃から身近にバイクがあったそう。
「のどかな時代で、空き地などでバイクに乗る練習をした覚えがあります(笑)。父はまわりの親とは違い、積極的にバイクを与えてくれました。きっと父の仕事を、そして家業を知って、興味を持って欲しかったのだと思います。」
大学卒業後、富士通の販売会社に営業として入社、4年後には当時父上が社長を務めていた旭精器製作所に入社。
6年ほど川口工場で勤務、生産現場を経験する。
「このやり方でいいのか?もっと効率よく生産ができないものかと、常に考えながら仕事をしていました。その時の経験や思いが今も生きています。」 効率の良さと、品質の高さを両立するという、難しい課題について、常に考えを巡らせている。
「ものごとに『絶対』ということはない。常に改善を考えています。」

試作中のリプレイスメント用ウインドスクリーン。
上から時計回りに、カワサキ ニンジャ250SL用、ヤマハYZF-R25用、BMW R1200GS用。
4月発売を予定している。

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旭精器のウインドスクリーンはポリカーボネートの一枚板から成型されている。
左が成型前、傷防止のフィルムでい覆われたポリカ板。
右は成型直後。

現在はオリジナル商品の製造販売はもとより、国内バイクメーカーに純正用品のウインドスクリーンをOEM供給、多くの車種に純正採用されている。
「今国内でウインドスクリーンを製造しているメーカーとしては、恐らく我々が唯一ではないでしょうか。」
そんな旭精器製作所にはモノづくりの上で、ゆずれないこだわりがある。
「昨今では効率を重視してか、多くのウインドスクリーンがインジェクション=射出成型によって作られています。しかし我々のウインドスクリーンはポリカーボネート(ポリカ)の板曲げで作っています。」
工程は複雑になるが、ポリカ×板曲げは歪みが少なく強度に勝る。一部の商品は、特殊コーティングによって傷をカバーしているという。
「歪みのない安心・安全な製品作りを、自信をもって続けています。そして何よりもMADE IN JAPANにこだわっていきたい。」

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ウインドスクリーンにメタルのフレームを取り付ける。
旭精器はウインドシールドや取り付けステーの生産から組み立て・仕上げまで、すべての工程を国内で行っている。

高品質な製品を安定供給していくのが使命。
その上でクルマのフロントウインドウのように、いい意味で運転者にとって存在感のないウインドスクリーン作りを目指していると言う。
もちろんユーザー、すなわちライダーに認められるモノづくりを心がけながら。
「それにはいい素材と生産機械、それを扱うスタッフの高い技術力も必要不可欠です。製造工程は常にアップデートしており、一部はデジタル化によって効率がよくなりました。しかし、職人の手の感覚はずっと大切にしていきたいですね。」
約20名の社員のうち、半分が生産現場に携わっている。
スタッフが作業をするなかで、気付き、工夫、改善がしやすい現場でなければならない。
教育や職場環境の改善にも気を配るようにしていると古屋さんは言う。
「経営者も事務所に籠っていてはいけない。想像でものを語ってはいけないし、対話もメールだけじゃダメだと思います。常に現場、現実、現物に関わっていたい。その場に出かけて行って、会って、リアルに対話することが肝心です。わかっていながらも、忙しくなるとそれが出来なくなる。 私自身も余裕を持って仕事に取り組めるように工夫しなければ、と思っています。」

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左から旭精器製作所、製造部長 小岩井敏克さん、代表取締役社長 古屋晃男さん、開発部 尾亦正光さん。

長い歴史の中で育まれてきた日本製ならではの品質、こだわり、そしてライダーへの強い思い。
インタビューの最後に古屋さんが言った「バイク乗りに愛され評価して頂けるウインドスクリーンメーカーとして、新しい製品も開発しながら、旭精器製作所としてのブランディングを確立していきます。」という思いは、必ずや果たされることだろう。

"効率の良さと、品質の高さを両立するという難しい課題について考えを巡らせ、常に改善を考えています。"

★profile★
古屋晃男 Teruo Furuya
東京・荒川区生まれ。
富士通の販売会社を経て、祖父が創業した旭精器製作所に入社。2014年、同社代表取締役社長に就任。
「バイク乗りに安全・安心な製品を、それを作るスタッフには働きやすい職場を」がモットー。

取材協力:
株式会社旭精器製作所
上の写真は東京都足立区にある旭精器製作所本社。
http://www.af-asahi.co.jp

下の写真は、同社ポリカ製ウインドスクリーンの一部。
左上から時計回りに、カワサキ ニンジャ250用/ホンダ リード125用/ヤマハ ボルト用/ヤマハ トリシティ用

photo&text: Gao Nishikawa

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