クリーニングでモータースポーツを、勝利を支える。 株式会社 MAKE WINNER 石塚千花

汚れたり汗をかいてもジャブジャブ洗うことができないスポーツウェアがある。
安全のために難燃素材を幾重にも重ねて作られた四輪レース用のレーシングスーツや、天然皮革を使ったライダースジャケット。
それらを専門に手がけるクリーニング・カンパニーを訪ねた。


新潟市内にある株式会社MAKE WINNER(以下MW)の拠点には、同社のロゴとともに『衣類のお医者さん チャム』の看板が掲げられていた。
「ここは、近隣の皆さんから衣料品のメンテナンスを幅広く承るいわゆるクリーニング屋さんですが、レーシングスーツなどの特殊クリーニングに関しては全国からご相談があります。」と語るのは、MWの母体である、有限会社リリーズ・カンパニー代表の広井おさむさん。
創業20年の『チャム』は、カッコよく仕上げたビジネススーツでいい仕事をして欲しいというコンセプトのクリーニングサービス、『OTOKOMAE CLEANING』など、数々のユニークなアイデアによって、業界でも異彩を放つ存在なのだ。

MWは同社の傘下でレーシングスーツなど特殊クリーニングを担う。
代表の石塚千花さんは「F1好きで片山右京さんのファンでしたが、クルマには詳しくありませんでした。」という。
レーシングスーツのクリーニング手がけることになったきっかけは、スーパーフォーミュラやスーパーGTに参戦するチームルマンの関係者から相談を受けたこと。
シミ抜きの専門家で洗濯のプロである石塚さんは「特殊な素材でも布である以上、クリーニングは可能だろうと思いました。」と新しい領域への進出に躊躇はなかったそう。
持ち前のポジティブな姿勢、豊富な経験と丁寧な仕事でチームからの信頼を獲得。
グローブやシューズ、ヘルメット、そしてドライバーだけでなくピットクルーのスーツまでのクリーニングを年間を通して手がけるようになる。

「私自身ひとりのレースファンとして、ドライバーにはカッコよくあってほしい。特にトップドライバーは露出が多く注目を浴びる存在。いつもきれいなスーツを身に着けてほしいのです。」
やがてその評判が拡散、現在ではサードレーシングなどのトップチームをはじめ、ラリーやカート、アマチュアまで、レーサーが身に着けるもの全般のクリーニングを担うようになった。


「汚れや匂いを気にせず、ストレスのない状態でいいレースをしてもらいたい。我々の仕事でドライバーやピットクルーはもちろん、スタッフの皆さんの負担も減らしたい。その先に勝利があるのだと考えています。」
社名を”MAKE WINNER”としたのは、もちろん『クリーニングで勝利者を作り出すことが使命』と考えているから。

「特殊クリーニングは高価だと感じる方も多い。そこでホームページには自分で出来るメンテナンスや洗い方についても掲載しています。ご自宅でも洗濯ができるオリジナルの洗剤や、抗菌消臭剤もご用意しています。いい走りのために、そして勝利のために、レーシングスーツにも気を遣って頂きたいのです。」と話すのは、広井さんだ。

筆者もかつてレーシングスーツの洗濯には苦労した覚えがある。
また、ヘルメットやレザージャケットのメンテナンスは現在進行形の問題。
この原稿を書きながら、これからはMWに相談してみようと思っている。

レースが終わると、たくさんのスーツが届く。ドライバー、メカニック、それぞれに汚れ方が異なる。


石塚さんが得意とするシミ抜きの工程。オイル汚れやタイヤカスなどを丁寧に取り除いてゆく。

クリーニングが終了したレーシングスーツは、しっかりと乾燥させた上で、各チームに届けられる。


MWがクリーニングしたスーツを着用したヘイキ・コバライネン選手、平手晃平選手は、スーパーGT第2戦の富士で、見事2位でフィニッシュした。

「クリーニングでお客さまにどんなプラスαのメリットを提供できるかを常に考えています。」と語る広井おさむさんは、MWの母体、(有)リリーズ・カンパニーの代表取締役で、MWのPRセールス部門の担当も務める。
クリーニング啓蒙のため情報バラエティー番組などにも出演。
ビジネススーツ・クリーニングのブランド『OTOKOMAE CLEANING』なども生み出してきた。


近年、レザーアイテムのクリーニングにも注力している。
バイク乗りの必須アイテムであるレザージャケットやスーツ、ブーツがその中心であり、レース業界で培ったヘルメットのクリーニングも得意科目。
全国からの依頼も可能だ。


石塚千花さん
レーシングスーツのクリーニングを専門に行う株式会社MAKE WINNER代表取締役。
もとは母体であるクリーニング会社『リリーズ・カンパニー』の従業員で、シミ抜きの専門家。
現在、クリーニングの実作業はもちろん、受け入れから発送、チームとのやりとりまで、業務のを多くを自ら行う。
レースの現場にも足を運び、サポートチームの勝敗に一喜一憂、時に涙する。
「私が目指すのは、ドライバーやピットクルーたちのお母ちゃんのような存在です。」と笑う。

取材協力
株式会社 MAKE WINNER
新潟県新潟市西区坂井砂山3-11-11
TEL:025-269-4112
http://makewin.jp

photo&text: Gao Nishikawa

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