ORM読者なら、必ずやこの作風に見覚えがあるはず。モチーフへの深い愛情を感じさせる暖かいタッチで、表情豊かに描き出された名車たち。僕GAOも尊敬する先輩イラストレーター、安藤俊彦さんのアトリエを訪ねた。
クルマやバイクのフィールドで活躍するイラストレーターとして著名な安藤俊彦さん。僕も雑誌を通して安藤さんの作品を楽しませて頂いている一人だ。
「子供の頃は、よくディズニーキャラクターを描いていました。桑沢デザイン研究所でデザインやイラストを学び、絵本作家のアシスタントや広告制作会社でイラストを描く仕事をしていました。ファッションが好きで、広告イラストもファッションとキャラクター担当でした。」なるほど、これが作品から漂う素敵な空気感のルーツなのだと納得した。
「独立後、”NAVI”で連載をさせてもらうようになって、クルマの仕事が増えました。」
上のイラストは、竹ペンによる優しくも力強いタッチの線と、アクリル絵の具や色鉛筆など、様々な画材による多彩な表現で、独自の世界観を描き出す。卓越したセンスとカラフルな色使いは、ファッションイラストのバックボーンを持つ安藤さんならではのものだ。
アトリエのデスクには制作途中のイラストが多数。
「新しい絵本のコンテなんです。」というが、彩色すれば作品として完成しそうな雰囲気だ。
作品を印象づける個性豊かな線を描くための道具が『竹ペン』であることも今回知った。竹の先端を斜めにカット、インクを溜めるスリットが入るシンプルなペンだ。市販品のペン先を自分で削って使っているそう。
「思い通りに描けないところが面白いんです。」と安藤さんは楽しそうに語る。
イラストの依頼は、車種の指定がない場合が多いのだという。
「ありがたいことに、その時に描きたいものを描かせてもらっています。」
様々なフィールドでの経験により磨かれたセンス、そして穏やかな人柄がそのままイラストに現れている。安藤さんとお話ししながら、その作品の魅力の根源を垣間みることができたような気がした。
上の画像は、アトリエでの制作風景。竹ペンをはじめ、カラーインク、リキテックス、色鉛筆など、様々な画材を使って、独自の世界観をつくりだす。周囲にはイラストの資料として用意したヨーロッパの名車のスナップが貼られ、デスクの上にはミニカーたちが無造作に置かれている。
アトリエのデスクには、現在制作中の新刊絵本のための見事な絵コンテが。
安藤作品になくてはならないのが竹ペンによる表情豊かなライン。
「市販の竹ペンを買ってきて、ペン先を自分好みにカスタムして使っているんです。」と安藤さん。
小型車が好きだと言う安藤さんは、JA11ジムニーやミニ・ケンジントンに長く乗っていたそう。今の愛車は、桐島ローランドさんが撮った動画を見て一目惚れして5年前から乗り続けているというアピオジムニーだ。安藤さんが描いた絵本をめくっていたら、主人公のミニとともに愛車アピオジムニーもさりげなく登場していた。(写真下参照)
「ドッシリして頼り甲斐がある 軽とは思えないところがいい。それに今住んでいる鎌倉は道が狭い。アピオジムニーは今や生活に欠かせない存在です。」と惚れ込んでいる様子だ。
安藤俊彦:沼津生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、広告制作会社でファッションイラストなどを手がけ、85年からフリーに。89年NAVI誌で連載を開始、以後クルマ、バイクのイラストが仕事の中心となる。現在も、NAVI CARS、MOTONAVIをはじめとした雑誌や、広告の世界で活躍中のイラストレーター。絵本作家としての顔も持つ。
下は安藤さんによる作品。竹ペンによる優しくも力強いタッチの線と、アクリル絵の具や色鉛筆など、様々な画材による多彩な表現で、独自の世界観を描き出す。卓越したセンスとカラフルな色使いは、ファッションイラストのバックボーンを持つ安藤さんならではのもの。かつての愛車、ミニをはじめ、クルマが主人公の絵本も出版している。
photo&text: Gao Nishikawa
special thanks: APIO(0467-79-3732/www.apio.jp)