茨城県日立市。赤津工務店は建築にまつわる大掛かりな金属加工を得意とする鉄工所。この場所の主である赤津新創さんは、ベテランの職人であり、その技を駆使してさまざまなカスタムやモノづくりをしている好人物だ。
「クルマのカスタムをしたり、パーツやおもちゃを創りたくてこの仕事をしているようなものです。」と屈託なく笑う赤津さんは、父上が経営するこの工場で18才から働くようになり、現在ほとんどの仕事を自身の手でこなす。ビルの鉄骨や、大型看板の支柱、門扉など、自分にできる鉄工作業なら何でもやるという。
「面倒だからと他の職人さんが請け負わないような仕事も受けちゃう。だからいつもスケジュールに追われています。忙しい時ほど、新しい遊びのアイデアが浮かんできて、そっちのモノづくりがしたくなるのが困りものです。」
免許取得後最初のクルマは軽のピックアップ、スズキ・マイティーボーイ。荷台に手づくりのロールバーが付けたくて選んだ。現在も仕事用のトラックから、山で遊ぶジムニー、普段乗りのシボレーC1500、ハイラックスまで、愛車はすべて自身が創ったパーツをふんだんに使ってカスタムしている。
クルマも工場の機材も、ここにあるのは一見して旧いものばかり。使い込まれて汚れたりへこんだりしているものも多いが、そのすべてが調子よく動いている。そして、注文を受けて製作している鉄製品は、どれもとても緻密に、丁寧に仕上げられている。いつも忙しいのだというのも納得だ。
「旧いものが好きなのです。道具もクルマも壊れたら修理する、壊れないように工夫する。ないパーツは自分で創ればいい。それを楽しんでいるのでしょうね。」と赤津さん。
赤津さんのプライベートのアシは上の写真の2台。
ローダウンしたシボレーC1500と、思い切りリフトアップしてシボレーのバンパーをインストールしたハイラックス。
どちらも自らカスタム、公認も受けているから人目をはばかることなく乗り回せるのだという。
ジムニーJA11をベースに、工場内で作り上げたロッククローリング・マシン(写真上)も圧巻だ。
「こいつで山に行くようになって10年ほど。工夫しだいで、並みの四駆では行けないところを走れるのが楽しいのです!」と赤津さん。
赤津新創:
赤津工務店代表にしてベテランの金属加工・鉄工職人。
四駆とトラックを愛し、若い頃からラリードライバー塙郁夫氏の大ファン。座右の銘は「みんな同じ人間なんだから、何でも出来るさ!」このことばをくれた塙氏は今、自ら開発したマシンでバハ1000やパイクスピーク・ヒルクライムなど、世界の舞台で活躍している。
上は、ジムニー乗りに人気だという赤津さん製作のデフガード。
自分の経験を元にオリジナルパーツを創造。ジムニーでオフロードを楽しむ全国のファンにネットを介して販売しているのだ。
工場にはクルマだけでなく、大掛かりにカスタムされたラジオフライヤー、ドラム缶をベースに創ったBBQコンロやストレージボックスなど、楽しい手づくりおもちゃが無造作に置かれている。
「意味のないことにこだわって、意味のないモノを創って楽しんでる。でも無駄なことの素晴らしさもあると思うのです。」
誠実に仕事をして、本気で遊ぶ。今の時代、本当に必要なことは何なのかを、教えてもらったような気がした。
photo:得意の金属加工技術を生かし、ラジオフライヤーも自在にカスタム。仕事も遊びも、いつでも本気なのだ。
錆びた鉄扉も、いい雰囲気にカスタム。ドラム缶も赤津さんの技でストレージボックスに変身している。
画像下:
「仕事用の三菱キャンター4WD(写真)もFUSOファイターも30年選手。もはや旧車です。」と赤津さんは笑う。/赤津さんの本業は鉄工職人。特に建築用の大掛かりなものを得意とする。この日製作していたのは、工場のエントランスに取り付ける門扉。屋外の看板の支柱や、建物の鉄骨の加工など、日々様々な仕事の相談が持ち込まれる。/年季の入った大型機械は、12mmの鉄板が切断できるシャーリング。父上の代から引き継ぎ今も現役、昭和30年代のシロモノだ。
photo&text: Gao Nishikawa
special thanks: 赤津工務店 0294-52-5044