サーフボードをルーフラックレイドキャリアに載せたアピオジムニーを海へと走らせる。お気に入りのサーフスポットへ行って、波音をBGMに眠りにおちる。翌朝、朝焼けをバックに波乗りする気持ち良さといったら、コトバにならない。
アピオジムニーのタイヤは空転することなく、外房の砂浜を噛み締めるように進み続けた。風は心地よく吹きつけ、波もある。
都内を出るのはだいたい深夜で、到着するやいなや少しだけ仮眠をとったら、日の出とともにウェットスーツに着替えて波間へと分け入る。かつてサーフィン仲間と毎週のように通っていたこの海は、ホームグラウンドと言っても過言ではない。子供達でにぎわう遊泳時間が始まる朝7時頃まで、砂浜と海を何度も往復し、波にもまれながら仲間達とはしゃいでいた。沖で波待ちしているときに見える水平線のキラキラした感じが、最高に好きだった。
現在はその仲間達も家庭をもち、やがて子供が生まれたりと、一緒に来ることはめっきり少なくなった。とはいえ青春時代を過ごしたこの海は、変わらない美しさのまま、あの頃と同じ波音を奏でている。唯一変わったのは、僕のクルマだった…。
あの当時、僕は荷物がたくさん積載できる二駆の軽ワンボックスに乗っていて、何度か砂浜でスタックして地元のサーファー達に助けてもらったことがあった。そんな彼らの足となっていたのが、背面タイヤを積んで縦横無尽に走るランクル、パジェロ、CR-V、そしてジムニーなどの四駆だった。それを見た僕は「いつかあんな四駆に乗ってやる」と決意。そのうちに時は流れ、僕よりも先に結婚して子供を授かるという兄不幸な(?)弟に、僕はその軽ワンボックスを譲ることに。
さあ、いよいよ憧れの4WDだ。
仕事でお世話になっている(株)ギガントの中津川社長に相談すると、「アピオジムニーがいいよ!」と教えてくれた。
相模原のお店に出向いて試乗させてもらって、僕は新しい相棒をTS-7に決めた。強烈なパワー、リフトアップした猛々しいルックス、頑強なルーフキャリア、深いネイビーのボディ、旧型ジムニーとは比べものにならないほどの車内の広さ、スムーズに曲がるハンドリングの軽快さ、すべてが心地よかった。クルマにもかかわらず、普段僕が乗っているセロー250というヤマハのオフロードバイクを操る感覚に不思議と似ていた。唯一違うのは、4人乗れるということ。仲間と旅ができるのだ。
一昨年、ルーフキャリアに60から70リットルの登山用バックパックを4つ載せて、登山仲間4人で日本最高所の野天風呂・本沢温泉へと向かった。道中の急峻な山道を駆け上がったときは、アピオジムニーの走破性の高さにあらためて感動した。
サーフィンだけでなく、登山、キャンプ、スノボ、トレイルラン、MTB、パックラフト。遊び道具満載で、さらに遊び仲間を3人乗せて、目黒の自宅から海や山へとシームレスに運んでくれるジムニーは、僕の最強の相棒だ。
いまでは砂浜でスタックすることもなくなったが、それがじつは少し寂しい。地元のサーファーと話をする機会が減ってしまったからだ。だから最近はサーファーを見かけると、つい声をかけてしまう。
「波がなくなっちゃいましたねー。」
「朝がいいんだよ。満ち潮のちょっと後、そこに一番イイ波が来るんだよね」
「そっか、今日はちょっと出遅れたか。」
忙しい仕事の合間を縫った遊びの時間。そして遊べるカラダを保つためのトレーニングの時間。アピオジムニーが来てからというもの、僕はそんな楽しくも悩ましい時間のやりくりに追われている。さあ、次はいつも通り、一番イイ波を狙って朝イチから波乗りをしに来よう。
リムーバーを噴霧するのを忘れたので、そのままワックスを塗る。気温はもう夏用ワックスでOK。少し落ち着いてしまったが、何とか波をとらえて浮遊感を味わえた。波がイイ時と悪い時があるものの、野菜が美味いレストランや温泉があるので、千葉の海が好き。
サーフボード以外にも、無印良品のコンテナを2つ載せて(56リットル×2)、キャンプ道具や登山道具を入れることも。キャンプがメインの時は、クーラーボックスやツーバーナーも載せている。
ノーマルの状態でも、フロントのシートを倒し、リアシートもフラットにしたら、182cmの僕でも車中泊モードにできる。さらにクライミットのエアマットやナンガのスリーピングバッグがあれば◎
山下晃和:
タイクーン所属モデル。
間は開きつつもサーフィン歴は約12年。トラベルライターとしても活動し、昨年フロリダ半島を自転車で縦断し、雑誌やWEB等に旅記事を寄稿。最近の好きな雑誌はSlugger(日本スポーツ企画)
photo:Gao Nishikawa
text:Akihito Yamashita
edit:Miyuki Nakada
Special Thanks:APIO(0467-79-3732 http://www.apio.jp)