ロックバンド『ギターウルフ』セイジ、バイク、ライダースジャケット、そしてアメリカを語る。

結成以来、ハードなパンクロックをプレイし続け、アメリカをはじめ海外でも高い人気を誇るスリーピースバンド、『ギターウルフ』。そのリーダーでボーカルを務める”ギターウルフ”ことセイジさんは、バイクやライダースジャケット好きとしても知る人ぞ知る存在。本誌GAOがその素顔に迫る。

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Guitar Wolf and Motorcycle
 インタビュー場所の候補から、セイジさんが選んだのは横浜の『ビッグママカフェ』。手作りハンバーガーが自慢のアメリカンダイナーだ。梅雨晴れの当日、カワサキ750RS、通称Z2(ゼッツー)に跨がって颯爽と登場したセイジさんは、蒸し暑い日でもご覧のスタイル。15年以上前に見た真夏のライブでも、レザーの上下でキメていたことを思い出す。
 16歳からバイクの魅力に取り憑かれ、ホンダのスーパーホーク3、カワサキZ400 LTDなどを経て、このZ2と出会った。決してピカピカではないが「手に入れて20年以上ずっと乗っている」というだけあって、オーナーとの一体感は抜群だ。バイクが制作のヒントになることも多く、“KAWASAKI ZII 750 ROCK'N'ROLL”や、“カミナリ ワン”、“環七フィーバー”といった楽曲には、バイク愛がストレートに表現されている。「ただバイクに乗りたくてウズウズしていた若い頃の感覚を今もはっきり覚えている。乗っていてちょっとヒリヒリする感覚がバイクの魅力だと思うのです。」
上の写真はセイジさんのZ2。セパハン、集合管、カラーリングなどで『セイジ・オリジナル』に仕上がっている。“Fix”はセイジさんが信頼を寄せメンテナンスやカスタムのすべてを任せているショップの名前。

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Guitar Wolf and Rider’s Jacket
 ステージでも欠かさず身に着け、ギターウルフを象徴するのがダブルのライダースジャケット。しかし激しいパフォーマンスでは大量の汗をかく。「臭くなってしまうので、洗濯機で洗っています。そうすると2年ぐらいで革が裂けてくる。塩分にやられるのか、縫い目じゃなくて革の表面がバリバリ破れてくるんです。だから普段着るジャケットと、ライブ用は分けています。」と驚くべきレザージャケットとの付き合い方を、こともなげに話すセイジさん。もちろん海外ツアーでもレザーを脱ぐことはない。ある時「お前たちのようなミュージシャンを他に知らない。」と声をかけてくれたのは、英国の老舗レザージャケットブランド『ルイスレザー』のオーナー、デレク・ハリスだった。「今日履いているパンツとベルトはデレクからプレゼントされたもの。夏にはギターウルフモデルのジャケットを発売してくれるというので、今から楽しみにしています。」
上の写真は、セイジさんの近影と、ルイスレザーのパンツとベルトのバックスタイル。スタッズで打ち込まれた“Jet Rock n Roll”の文字は、ギターウルフの音楽スタイルを表現するキーワード。

Guitar Wolf and RoadTrip USA
 「アメリカの音楽が好きで、21か22歳の頃に初めて渡米しました。グレイハウンドでニューヨークからロスまで、約一ヶ月の旅です。」ひとり旅は感性が磨かれて、とてもいいものだとセイジさんは言う。「いいことばかりじゃない、頭にきたり悔しかったりすることもありますが、全部自分ひとりで受け止めなきゃならない。でも、どんな経験も楽しい思い出です。」当時好きだったのはブルース。その聖地、テネシー州メンフィスにも行ってみたが、この時は本場のブルースに触れることは叶わなかった。帰国後、ブルースを演奏することをやめ、大好きなもう一つの音楽、パンクロック一本になった。その心境の変化に、明確な理由はないのだとセイジさんは言った。
メジャーデビュー以前の93年、ギターウルフとしてガレージショックというイベントに出演するため、ワシントン州シアトルの北、ベリングハムという街のライブハウスに行った。そこで運命的な出会いがあった。「ライブの後、何人かに『俺の街でもライブをやってみないか?』と声をかけられました。その中にエリックという男がいたのです。その後の予定も決まっていなかったので、エリックのホームタウンであるメンフィスに行きました。」8年前に訪ねた思い出の街を再訪、そこでパンクロックを演奏、心が躍動した。エリックにデモテープを渡して、メンフィスをあとにした。
 帰国して数ヶ月後、エリックから4つの箱が届いた。それはデモテープの音源が納められたギターウルフのLP“WOLF ROCK”だった。「レーベルを立ち上げたいと言っていたエリックは、自身のレーベル『ゴナーレコード』の記念すべきファーストアルバムにギターウルフを選んでくれたのです。もちろん我々にとっても初のアルバム、嬉しかったですね。」そのおかげで現地のロック雑誌の表紙を飾ることになったギターウルフは、アメリカでの知名度を大いに上げた。以後ほぼ毎年のようにライブを行っているメンフィスは、ギターウルフにとってはずせない場所になった。エリックとの出会いが、現在も続けているアメリカツアー、そして世界各地で行っているライブの足がかりになったのだ。
 ツアーを通してセイジさんが感じていること、それは音楽文化の成熟度の違いだという。「多くの部分は日本の方が優れていると思う。しかし音楽に関してはアメリカの方が凄い。ライブに子供からおじいちゃんまでが来て、思い思いに楽しんでいる。これはかなわないなと思いますね。」
 世界中でライブをしているギターウルフだが、まだ行っていないのがアフリカだという。「エジプトでライブをやりたい。3人でピラミッドの前でラクダに跨がり写真を撮りたいのです。ラクダにKAWASAKIのロゴを付けて!」とセイジさんは楽しそうに言った。

After the interview...
 インタビューの後、ビッグママカフェのハンバーガーを堪能したセイジさんは、『これまでアメリカで喰ったどのバーガーより旨い!』と絶賛。
 最後に『セイジさんにとって、バイク、ライダースジャケットとは?』と質問してみた。すると
『ギターとともに、自分をカッコよくしてくれる大切なモノ』と即答。
『ないとカッコつかないんです。』と言い残し、Z2に跨がって走り去って行った。
 過激なパフォーマンスからは想像できない、丁寧で実直な話しぶり。好きなモノやこれからの夢を語る時、サングラスの奥に垣間見える少年のような眼差し。そして、決してブレることのない生き様。
 そう、セイジさんはただカッコつけてるだけではない。ホンモノのカッコ良さを体現している、愛すべきロックミュージシャンなのだ。
 後日届いたメールの末尾に記された『是非素敵な雑誌を作って下さい。』のメッセージに痺れた。

ギターウルフ・セイジ(写真右)
島根県出身。87年にギターウルフを結成。97年、キューンレコード(現:キューンミュージック)よりメジャーデビュー。現在もワールドワイドに活躍中。

★イベント告知★
島根でセイジさんの主催イベント開催!
この夏、故郷・島根でギターウルフ・セイジさん主催の『シマネジェットフェス・ヤマタノオロチライジング2018』が開催される。「古墳とロックとUFO!他の音楽フェスとちょっと違った感じが味わえる不思議なフェ
スです。」とはセイジさんからのメッセージ。
出演は、ギターウルフ、大森靖子、POLYSICS、タブレット純、石見神楽温泉津舞子連中、他多数
9月29日(土)古墳の丘古曽志公園
9月30日(日)後夜祭 松江 AZTiC canova
詳細は下記をご参照
jettfes.net

photo: Kazumasa Yamaoka
text: Gao Nishikawa
special thanks:
Bigmama Cafe(横浜市都筑区北山田2-4-20/045-592-3331)
鶴田洋二(美廣社)

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