『衣類のお医者さん』を名乗るリペア、リフォーム職人の山崎隆正さん。実は山崎さんは開業して16年のクリーニング屋さん、本格的にミシンに向き合いはじめたのは10年前、修理に注力するようになって8年ほどなのだという。きっかけはクリーニング店の価格競争と顧客のクリーニング離れだ。「コンビニエンスストアよりも数が多いクリーニング店の売り上げはここ30年で1/3になり、さらに減ると言われています。そこで衣類のリペア、リフォームを始めたのです。」日中はクリーニング店、リペアは集中して作業できる閉店後に行うのが山崎さんのスタイル。「欧米ではクリーニング店が『ファッションメンテナンス』、つまりリペアも行うのが一般的。クリーニングのついでにリペア、リフォームができればお客様も、そして店もハッピーなのですから、日本もそうすればいいのです。」
取材当日は山崎さんが校長を務めるリフォームスクール開催日。山崎さんを『師匠』と呼ぶ受講生は全国に40名以上。全員が業界の現状に問題意識をもつクリーニング店経営者だ。「リペア、リフォームのノウハウを仲間たちと共有することでクリーニング業界はもっと良くなるはず。私は得意のデニム・リペアや大好きなミリタリージャケットのファスナー、リブニット交換を中心にお客様のニーズに応えている。リペアの過程をネットやSNSで公開すると遠方からも依頼が来るようになりました。地元が相手のクリーニング店では考えられなかったことです。リペアの技術だけでなく私の経験、ノウハウを仲間たちに伝えるのも、スクールの役割なのです。」だから受講生にも『自分の好きな仕事や得意分野を見つけて欲しい』と教えているという。「それもネットでの検索キーワードになりますから。」と明るく前向きな山崎さんの元に集まった受講生たちもまた、情報交換しながら楽しそうにミシンに向かっていた。テクニックとアイデアで顧客ばかりか業界全体を笑顔にする。お気に入りの服をリペアするなら、こんな人たちにお願いしたいものだ。
ファスナー交換は破損したファスナーの取り外しから始まる。糸をひと針ずつ丁寧に切って破損したファスナーを外していく。新しいファスナーの縫い付けに際しては、すでに革にあいている針穴を可能な限りトレースしつつ、丁寧にミシンを走らせる。精密さが要求される作業だが、山崎さんの手もとは一切の迷いがなく動きも早い!
埼玉県さいたま市北区宮原町1-375
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