歯科医が作る"アスリートを護るマウスピース"

「マウスピースって、使っている選手でもその機能を正しく理解している人は多くないと思います。」と話すのは、『たなか歯科診療室』の田中英一先生。
自分の診療室を経営しながら、20年以上にわたりアスリートのためのマウスピースを作り続けている歯科医、田中先生にお話を聞いた。


田中先生のマウスピースは、格闘家やモータースポーツで活躍するライダー・ドライバー、それにラグビー、アメリカンフットボール、サッカー、バスケットボールの選手などに、一人一人の歯型にあわせて手作りする、いわばワンオフ。プロだけでなく、アマチュアや学生アスリートも使っており、実は中学のバスケットボール部に所属する筆者の息子も、歯を折ってしまったことをきっかけに、田中先生のマウスピースを愛用している。
「厚みは1mm前後からで、柔らかいEVA樹脂製、競技のカテゴリー、好みや要望をもとに作ります。打撃を受ける格闘技では厚みが必要ですし、レーシングドライバーは着けたままピットと無線交信できなければいけない。モトクロスでは転倒のほか、ジャンプの着地時の衝撃で歯と歯がぶつかって脳震盪を起こすこともある。厚さ1mmほどのマウスピースでも身体を護ることができるのです。」
アスリートとコミュニケーションをとることはもちろん、現場に足を運んで競技を見ることにも積極的だ。
田中先生のマウスピースは、たくさんのアスリートたちと一緒に20年かけて作り上げてきたノウハウの塊なのだ。

上は、ドラッグレースの第一人者、ROD MOTORSの葛木良さんのために作られたマウスピース。葛木さんのお店のロゴ入りだ。

「ここ数年、さまざまな競技でマウスピースが注目されるようになってきました。とても嬉しいことです。お金儲けじゃない、僕の作ったマウスピースをつけて勝った、マウスピースがあったから助かった、そういう声が聞きたくてやっているのです。」

上の上段は全日本SUPER MOTOのチャンピオン、森田一輝選手のヘルメット。オーストラリアで大転倒した際の傷が痛々しい。「マウスピースのお陰で助かりました」と自身から手渡されたものだという。下段はシーズン終了後にお礼の品としてアスリートから届けられたヘルメットの一部。

田中先生の診療室には他にもアスリートたちから届けられた貴重なアイテムが飾られている。上はそのほんの一部。
取材時に訪れていたのは全日本女子モトクロス2019のチャンピオン、畑尾樹璃選手(左)とスーパー耐久などで活躍するレーシングドライバーの篠原拓朗選手。中央が田中先生。

「スポンサーしているわけじゃないのに診療室のロゴをつけてくれて、競技が終わると『ありがとうございました!』って本人からプレゼントされる。実はそれが一番嬉しい。」と田中先生はシャイな笑顔を見せた。

田中先生は20代の頃からキャロル・シェルビーの大ファンで、映画『フォードvsフェラーリ』は劇場で10回見たという。上の写真はキャロル・シェルビーと、若かりし日の田中先生。

たなか歯科診療室
神奈川県相模原市南区古淵4-4−5
042-730-3339
www.alohaclub.jp

photo&text: Gao Nishikawa

Related article

関連記事