スペシャリストに聞く『もしもの備え』。

先日編集部のキャンピングカー(ダッジバン・コンバージョン)でイベントに参加した際に興味深かったのが、「車内を見せて頂けませんか?」というご家族連れがとても多いこと。
コンパクトな中にすべてが揃った、ちょっと非日常な空間に乗り込み、楽しそうに歓声を上げる主婦や子供たち。
そして降りてきての一言は決まって「これなら地震がきても生活できるね~」だった。
熊本地震で『車中泊』という言葉が普及して以降、キャンピングカーからイメージするものが『アウトドアの楽しみ』だけでなく、『災害時の避難』になっているのだろう。
そこでオンザロードマガジンでは、『車中泊』そして『冒険』のスペシャリストを訪ね、普段から使える、そして災害時に役立つ知識、ノウハウについてインタビュー。
その極意をお伝えしよう。

車中泊を快適に。
「乗用車でも、工夫しだいでぐっすり眠れる!」
日本RV協会理事・くるま旅クラブ役員 佐藤正さん

キャンピングカーメーカー、ミスティック・プランニング代表としてもたびたび本誌にご登場頂いている佐藤正さんは、2016年4月下旬、日本RV協会、くるま旅クラブの関係者有志とともに、グランメッセ熊本の駐車場で、ある支援活動を行った。
そう、熊本地震の発生直後のことである。
「報道などでご存知の通り、頻発する地震の影響で自宅に戻れない方が大勢いらっしゃった。そして慣れない車中泊を、それも乗用車の中で強いられている方も多い。そんな被災者の方々が少しでも快適に車中泊できるよう、いわば車中泊のプロである我々のノウハウをお伝えしたのです。」
その内容は決して高度だったり難しいものではなく、特別な道具も必要ない。
例えばベニヤ板や段ボールでクルマの座席をフラットにする、網とホチキスを使ってドアガラスに簡易網戸を設置するなど。
「いろいろなノウハウをチラシにして、配布しました。どれも手軽なものばかりです。現場でも実演しましたが、段ボールは手に入りやすいし、非常に便利です。箱や切れ端を使って座席を寝かせたときにできる凸凹を補正するだけで、車内にフラットな床面がつくり出せて、横になってぐっすり眠ることができます。とにかく簡単なのでキャンプ場などでも一度試してみて欲しいですね。」


※下は、日本RV協会とくるま旅クラブが制作して、佐藤さんたちが活動の際に被災地の駐車場で配布したチラシ。

※熊本での活動の際のスナップ。手近な網をホチキスなどで袋状にしてドアにかぶせて挟むだけで、簡易網戸に。車内の凸凹は段ボールで補正することで、フラットな床面=寝床を作ることができる。


佐藤正・Tadashi Sato
長年の経験を元にキャンピングカーをオリジナルで設計、製作、販売する、山梨県のキャンピングカーメーカー、ミスティック・プランニング代表。
日常的にアメリカンスタイルのピックアップトラック・キャンパーを愛用。
趣味はモーターサイクルによるツーリング。

アウトドア・ギアをライフスタイルに取り入れる。
「楽しみながら道具を揃えて、自立しよう!」
冒険家 風間深志さん

東日本大震災では被災地にボランティアの拠点を設けて何度も足を運び、2016年の熊本地震発生に際しては、4月23~25日、ご自身が主宰するNPO法人『地球元気村』の開催地であり、関係者やご友人が数多く住まわれている熊本の被災現場をまわったという。
そんな経験をもつ冒険家の風間さんに、「万一の際に役立つアウトドアのノウハウ」について伺った。
「普段からアウトドアの経験があれば、対応、応用出来ることがいっぱいある。まずテントで眠ることの楽しさ、気持ちよさ、そして不自由を楽しんでみる。ベランダでも家の中でもいい、テントを張って、楽しみながら体験するといいね。テント、シュラフ、コンロがあれば何があっても困らないということを知っていると慌てないですむ。」
災害が起きると人はパニックになる。誰かを頼りたくなるのだと風間さんは言う。
「だけど"頼れない"のが災害。だから自立することが基本だと思う。」
そして具体的な提案をしてくれた。
「アウトドアの最先端の装備なんか、小さくて高性能で持ってるだけで嬉しい。楽しみながら道具を少しずつ揃えて、普段から使っていれば慌てないですむじゃない。」
そう言いながら愛用の品をバッグから取り出して見せてくれた。
「どこででも煮炊きして喰って眠る、そして生きる。"冒険"なんて大げさなものじゃなくていい、アウトドアを楽しんでいるだけでも、慌てないですむと思うんだ。」
と風間さんらしいアドバイスをしてくれた。

"GOAL ZERO"
携帯用のソーラーパネルとバッテリー充電器。
「現代人はケータイがないと不安になる。電源の確保も重要だよね。」という風間さん。
山登りの時にもこれをデイパックにぶら下げて充電しているそう。

※風間さんが手にするのは、愛用の"JET BOIL"。「すごく短時間でお湯が湧かせるのが嬉しい。ガスも節約できるし、いいよ!これは。」

風間深志・Shinji Kazama
史上初めてモーターサイクルで北極点、南極点に到達した世界的冒険家。
日本人としてはじめてパリ・ダカールラリーに参戦するなど、モーターサイクルラリーのパイオニア。
東日本大震災では石巻・南三陸を拠点に支援活動を行った。
昨年より三男の風間晋之介とともに2017年ダカールラリーを目指すプロジェクトを展開中。
今年9月にはツーリングラリーイベント、SSTR2016を主催。

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