インタビュー:ペイントの楽しさ、素晴らしさを伝えたい。工藤一広(ペイントファクトリー)

WE LOVE WHEELS!
KAZUHIRO KUDO from Paint Factory

繊細な技を駆使して美しいカスタムペイントを仕上げてきた工藤一広さん。ある時、樹脂製のバンパーやドアミラーまで真っ赤に錆びたマーチであらわれ度肝を抜かれた。その創造力の根源に迫る。

 クルマやバイク、ヘルメット、サイン看板などをペイントするペインターとして活躍するかたわら、オリジナルペイント用品の企画・製造・販売も手がけている「ペイントファクトリー」代表の工藤一広さん。これまでいくつかのプロジェクトをご一緒しており、編集部のアピオジムニー「ハンバーガー号」のペイントも、工藤さんの手によるものだ。そんな旧知の工藤さんに、あらためてインタビューしてみた。
「16歳で住宅塗装中心のペンキ屋に就職、当時からバイクなども趣味で塗っていました。23歳で独立し、絶版国産バイクの純正塗装再現が仕事の中心だった時期もあるのです。」エイジング塗装業者の手伝いで商業施設やテーマパークの施工でも経験を積んだ。だから「錆びマーチ」のアイデアを実現するのは、工藤さんにとって難しいことではなかったそう。
「バイクを綺麗に塗る技術と、エイジング塗装を融合させただけなんですよ。ペンキ屋って、塗装するモノ、相手の素材もいろいろで、材料・塗料に関する知識も自然に豊富になるのです。ペンキの種類もさまざまだし、筆や刷毛、ローラーにスプレーガン…、それこそ使えそうなものは何でも使ってみる。塗料や道具の使い方が大胆になるんです。そんないろんな経験が僕の強みなのだと思います。」

 上の写真は工藤さんと愛車のBMW Z3。自らの発案、手作りのレジン樹脂製(!)ダミーリベットと凝ったエイジング塗装で、潜水艦かステルス戦闘機のような迫力だ。

 カスタムペイントはアメリカで育まれた文化だが、「それをただトレースするだけでなく、日本から発信する世界観があってもいいと思っています。」と工藤さんは言う。

 DIYブームと言われる昨今「自分の手ででペイントしてみたい。」という人が増えているという。だから、デモやスクール、それに使いやすいペイント用品を提供することにも積極的に取り組んでいる。
「ペイントの楽しさ、素晴らしさを伝えたいのです。塗るだけで気分が上がるし、楽しくなる。そのキッカケづくり、お手伝いができればと思っています。」と工藤さんは柔和な笑顔で語った。

工藤さんの代表作「錆びマーチ」。ベース車選びから仕上げまで、センスの良さが光る。チョップしていないけどAピラーに溶接痕を作るなど、様々な工夫が凝らされており、見る者を楽しませてくれる。

イベントでのデモの様子。ワイルドなエイジング塗装だけでなく、美しい仕上がりのカスタムペイントや、繊細なピンストライピングまで、何でもこなす。その腕前は確かだ。

工房でアピオジムニーのエイジング塗装の下地作り。時間をかけた繊細な作業の積み重ねが、仕上がりを左右するのだという。

アピオジムニーのミリタリーカスタムも、編集部のハンバーガー号のペイントも、全て工藤さんの手による。どれもエイジングの技を駆使した見事な仕上がりで、見る者を驚かせ、また笑顔にする。

151021_kudo_05.jpg
工藤さんの道具箱。「DAGGER」ブランドのペンキは工藤さんのオリジナル。筆はアメリカ製の高価なものから100円ショップの商品まで、何でも使う。エイジングではパテや樹脂の成形など、様々なアイデアを凝らしてイメージをカタチにしてゆく。

photo&text: Gao Nishikawa / special thanks: ペイントファクトリー(http://paint-factory.jp

Related article

関連記事