ラジオから『スタンド・バイ・ミー』
昨年11月、NYのハンバーガーチェーン「SHAKE SHACK」が外苑いちょう並木にオープン。
この3月にはカリフォルニアの「Carl's Jr.」が秋葉原にオープンし、いま都内・国内のハンバーガー地図は徐々に、だが確実に塗りかわりつつある。迎え撃つは日本のバーガー各店。
モスバーガーはじめ純国産チェーンの商品力・開発力の高さはつとに知られるところだが、ここ十年で一気に開花し根づいた、チェーン店でない「スタンドアローン」なハンバーガー専門店のその磨き上げられた高度な技術力こそ、本場アメリカの”Hamburger”に対抗し得るものとしてあらためて注目したい。
その代表格のひとつに私はこの「Reg-On Diner(レッグオンダイナー)」を強く推す。
店名「Reg-On」はちょっとした言葉遊び。意味は……
店主横溝さんは高校卒業後、バイト代1年分を手に米国放浪3ヶ月半。NYからLAまでグレイハウンドで北米大陸横断の一人旅を敢行した。
途中バスに置いてけぼりにされて、NY州バッファロー郊外からシカゴまでヒッチハイクしたことも。
窓の外は見渡す限りの大平原。
乗せてもらったトレーラーのラジオから「スタンド・バイ・ミー」が流れて思わず涙がこぼれた。
アメリカ行きのきっかけは『オレゴンから愛』。
ドラマの舞台となった雄大な大地を一目見たくて。オレゴンにはひと月ほど滞在。
「ベンド」という内陸の古びた街を拠点にロケ地をめぐった。
帰国後は都内アメリカンの草分け、東京・自由が丘の「BUTTER FIELD'S」に6年勤務の後、ハンバーガーの名店、人形町「BROZERS'」に約3年。
横溝さんのハンバーガーはこのブラザーズの影響を強く受けている。
写真のバーガーに注目。
この高さ！串もスキュアも刺さっていない。
だのに自立している。手先の器用な日本人ならでは作れる、これぞまさしく日本の建築技術の粋！ そびえ立つこの美しさ。
トマトの赤、チーズの黄、アボカドの緑、そのいろどりの華やかさ。
まるで精巧な「おもちゃ」のような、これは工芸品、もはや芸術の域だ。
私の知る限り、これだけのハンバーガーの作り手は都内にわずか数人しかいない。
その一人が横溝氏。
渋谷は渋谷でもスクランブルでない方、渋谷警察署の裏の普段行かない一角にぽつんと構えるスペシャルティショップ。
BGMは朝からラップ＆ヒップホップ。ガイ、レックスン・エフェクト、そしてTLCが大好き！
今回のバーガー
東京を代表するハンバーガーショップに挙げた理由がコレ、A.B.C.バーガー 1,450円。豪州牛100％・115gパティに、アボカド「A」ベーコン「B」チーズ「C」のトッピングでA.B.C。その下に丁寧に畳まれたレタス。だから上の具材がすべらない。傾かない。
ハンバーガーを積ませたら都内屈指の名手、横溝さん！
― shop data ―
所在地: 東京都渋谷区東1-8-1
アクセス: 首都高3号渋谷線・渋谷出口より4分
駐車場: 店舗裏手にコインPあり
TEL: 03-3498-5488
* 営業時間 *
月～土: 11:00～22:00(21:30LO)
日・祝: 11:00～20:00(19:30LO)
定休日: 火曜日(要確認)
text: Yoshihide Matsubara photo: Yoshihide Matsubara, Gao Nishikawa
松原好秀 まつばら・よしひで
ハンバーガー探求家。アドバイザー。首都圏ハンバーガーショップのガイド本『THE BURGER MAP TOKYO』の出版ほか、国内唯一の評論家として活躍中。 http://www.hamburger.jp/
