大磯と言うと「湘南発祥之地」であったり、伊藤博文や吉田茂の別荘があったり、日本最初の海水浴場があったり(今夏それを覆す説を東京都大田区が提唱した)、「水泳大会」の会場であったりと、つまりは景勝地であり、別荘地であり、東海道八番目の宿場町であり、そして「海」である。
BESNUG(ビースナッグ)は国道1号線沿い、旧東海道・大磯宿の只中にあるハンバーガーショップ。海まで徒歩3分。店主・柏原さんは日本サーフィン連盟湘南西支部の支部長を務め、今夏、店の名を冠したサーフィン大会「BESNUGCUP」を初開催して、全国から200名の波乗りを集めた。奥さんと息子さんは全日本選手権にも出場する腕前である。
店は6年前、2007年にオープンした——が、その経緯が変わっている。柏原さんにはさらにもう一つ、新聞販売店の社長という肩書きがある。その新聞代金の「支払い窓口」を兼ねて当初ここに雑貨店を営業していたが、どうせやるなら趣味と実益を兼ねた飲食店にしようと、長年の夢だったハンバーガーショップに改装した。店名はお嬢さんの命名。小さな店だけれども「心地好く過ごして欲しい(Be Snug)」との思いから。
テーマは「海」。ハワイやカリフォルニアの海の傍によくある、一本道の道端にぽつんと一軒建つ小さな店——。白塗りの壁に木の椅子机。こじんまりとした田舎風な造り。装飾の少ない店内に掛かる一幅の油絵は、サーフ・アーティスト・Mie Ishii氏の作。シャッターにもIshii氏の絵が描かれているが、これは当然、営業中には見ることが出来ない。高齢者の多い町ゆえ、当初は受け入れられるか心配したが、これが意外な好反応。一方でサーフスポット・行楽地である割に若者の立ち寄れる店が少なく、平日はご年配、週末やシーズンになると一気に客層が若返るという守備範囲の広さを誇る。
ハンバーガーは全部で13品。チキン、フィッシュ、海老を使ったサンドイッチが8品。スパムロール、そしてハワイアンには欠くことの出来ない「ロコモコ」などがメニューに並ぶ。ランチセットは「ハウピア」というココナッツミルクで作ったハワイの自家製デザート付き。
パティは密集した挽肉の「赤身な感じ」が楽しめるUSビーフ100%、つなぎ無し。バンズは店名の焼印が押されて何ともcute。持つ手がズシリと重い、なかなかの総重量で食べ応えも十分。ケチャップ&マスタードがわかりやすく絡んだ、にぎやかなバーガーだ。
店内で食べるのも好いが、砂浜まで出て、秋の海を見ながら「ひねもすのたり」とハンバーガーを食べるもまた一興。ついでに「海」「波」「バーガー」で俳句の一つもひねっていただければ——すぐ近くの鴫立庵(しぎたつあん)は「日本三大俳諧道場」の一つである。
— shop data —
所在地: 神奈川県中郡大磯町大磯1093
アクセス: 小田原厚木道路 大磯ICより5分
駐車場: 専用P3台。国道1号沿いにコインP複数あり
TEL: 0463-63-0333
営業時間:
平日: 11:00〜22:00LO
土日祝: 10:00〜21:00LO
定休日: 月曜日(要確認)
(プロフィール)
松原好秀 まつばら・よしひで
ハンバーガー探求家。アドバイザー。コンサルタント。ハンバーガー専門誌『HAMBURGER STREET』、国内初の本格的ハンバーガーガイド『THE BURGER MAP 首都圏版』を出版。http://www.hamburger.jp/