変わらないことの価値に思いをはせながら、ヒストリック・ルート66を走る。

イリノイ州シカゴ中心部からカリフォルニア州ロサンゼルスのサンタモニカまで、約2,400マイルを結ぶルート66。俗に"Mother Road"と呼ばれるこの道は、アメリカのモータリゼーション黎明期に誕生。その後クルマ文化の発達、高速化にともないフリーウェイにその座を譲り、やがて旧き良きアメリカを象徴する存在となった。
そんなヒストリックルートを走りながら、変わらないことの価値に思いをはせてみる。

変わることの良さ」と「変わらないことの素晴らしさ」。アメリカに渡りルート66をロードトリップすると、そんなことに思いを巡らせている自分に気づくことがある。僕が普段生活している東京は、新しいこと、便利であることが至上命令であるかのように凄まじいスピードで変化を続けている。まあ、アメリカだって都市部に行けば同じようなものかも知れないが…。
 クルマやモーターサイクルを自ら運転して、巡航速度が70マイルを越えるフリーウェイをそれ、ヒストリック・ルート66を走り出すと、なぜだかいつも決まって「もっとゆっくり走ろうよ」と誰かに言われているような気持ちになる。

映画の舞台になった「バグダッド・カフェ」もカリフォルニアのルート66沿いにある。

観光ルートとして再評価されているルート66。ルートが通過するいくつかの街は少しずつ活気を取り戻している印象だ。

アリゾナ州セリグマン。ルート66再評価の立役者、映画「カーズ」に敬意を表しているのだろう、スーベニアショップの庭先には楽しいディスプレイ。

2,400マイル(約3,840キロ)、8つの州を結ぶローカルハイウェイ、ルート66。今は寸断されている場所もある。

はじめてルート66を走ったのは15年以上前。そのときに出会った既に充分に年期の入ったスチールや木でできた看板や建物、そのほとんどは今も同じ場所に佇んでいる。訪れるたびに以前と同じ景色が変わらずに残っていることに驚かされる。そんな事実に触れたとき、郷愁を感じる者、つまらない田舎の風景だと笑う者、感じ方は人それぞれだろう。僕はそんなどこか懐かしい景色を前にすると、「新しいこと、変化することだけが正しいとは限らないのではないか」と思ってしまう。年齢を経たからなのか、単なるノスタルジーなのか、変わらないことに価値を感じることが多くなった。石油製品を便利に消費しながら生活しているという事実は変えようがないが、レザーやスチール、そして木といったホンモノの天然素材を永く使ってゆくことが嬉しいと思えるのも、今の自分の偽らざる気分なのである。


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カリフォルニアのルート66にある有名なランドマークのひとつは「アンボイ」という砂漠の小さな町にある。
僕が訪れた日は、ハーレーライダーが集まるフェスティバルが開催され、大いなる盛り上がりを見せていたアリゾナ州のウイリアムス。

photo&text: Gao Nishikawa

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