「昭和40年に父がこの地、群馬県前橋市で創業。地元の"御用聞き"が主体の昔ながらのクリーニング店でした。」そう話すのは『水野クリーニング店』店主の水野伸重さん。異業種を経て、約25年前から父上とともに働くようになり、現在は奥様の宏絵さんを加え親子3人でお店を切り盛りする。実はここ、修理やクリーニングなどの相談ができるwebサイト、 “Repair929.com”(リペアクリーニングドットコム)に名を連ねる『リペア職人がいるお店』なのだ。
業界全体が不況と言われる今、水野クリーニング店が注力しているのが衣類のリペア、リフォームだ。家業を継いだ水野伸重さんが、特徴あるお店づくりのためにとまず身につけたのがシミ抜きの技術。
「シャツの襟元の黄ばみや、美容室からの相談が多い毛染め液による汚れなどのシミ抜き、部分日焼けした衣類の色かけ(染料や顔料で元の生地色に近づける)などの技術を『京技術 修染会』の石塚保博会長のもとで学びました。」
シミ抜きの講習会で出会った『チャムさいたま』の山崎隆正さんに刺激され、リペア、リフォームを本格的に手がけることになる。
「クリーニング店をベースに衣類のリペア、リフォームを精力的に行なう山崎さんのアドバイスを元に、2012年にミシンを導入。私はシミ抜きを、そしてミシンを使ったリペアは妻が主に手がけています。」宏絵さんが得意とするのは、穴が開いたり擦り切れたジーンズのリペア、そしてジャケットのリブやファスナー交換。ジーンズは裏側にあて布をして、色落ちなどを見ながら手間を惜しまず頻繁に糸色を替え、違和感なくリペア。顧客ニーズに素早く応えるために、多種多様なリブやファスナーも常備している。特徴ある取り組みとして、「止水ファスナー」の交換修理も行なっている。アウトドアジャケットやバッグに多用されている、水の侵入を抑える高機能な止水ファスナーは取り付けにもノウハウがある。
「リペアできるお店があまりないようなので、パーツを常備してご相談、ご依頼にお応えできるようにしています。」と宏絵さん。
<写真上>顧客ニーズに素早く応えていくため、フライトジャケット用のリブニットや特殊・高機能なファスナーなど、多種多様なパーツをストックしている。
web、SNSでの情報発信にも熱心だ。今は地元でチラシを配ってもほとんど反響がないという。しかしwebで情報を見た遠方の顧客からの相談は増え続け、リペア依頼品が日々宅急便で届く。
「山崎さんはじめ、リペアに携わる同業者、Repair929の仲間、先輩たちのアドバイスはとてもありがたいもの。この出会いがなければ今頃どうなっていたかと思います。」と伸重さん。
「リペアが仕上がると、とても喜んでいただけて『ありがとう!』って言っていただける。そんな時のお客様の笑顔が一番のやりがいです。」と宏絵さんも笑顔でお話ししてくれた。
<写真上>擦り切れたジーンズは、糸色を替えながらリペアすることで素晴らしい仕上がりに。近年ポピュラーになっているアウトドアジャケットやバッグなどに使われる防水機能をもつ「止水ファスナー」の交換が可能なのも同店の強みだ。
「シミ抜きは、『衣類が直せるクリーニング屋』として地元の皆さんに喜んで頂きたくて始めたことです。それに加え、衣類のリペア、リフォームを手がけるようになり、お客様が全国に広がったことで、さらにやりがいを感じられるようになりました。」と水野さんご夫妻は語る。
<写真上>生地の日焼けなどに対してはエアブラシを駆使して「色かけ」を行う。経験に裏付けられた「シミ抜き」の技も見事だ。(下の写真を参照)
水野クリーニング店
027-231-0692
https://maebashi-cleaning.com/
<写真下>取材時にはRepair929のお仲間も駆けつけた。左から群馬県太田市の加藤さん、水野伸重さん・宏絵さんご夫妻、そして埼玉県の市川さん
photo&text: Gao Nishikawa
取材協力:
リペアクリーニングドットコム
https://repair929.com