茨城県の『水戸2りんかん』の店頭でエンジンオイルのコーナーなどを担当する中城理恵(なかじょう・りえ)さん。そのはつらつとした雰囲気で、スタッフからは『フレッシュ中城』、そしてお客様からは親しみを込めて『リエちゃん』と呼ばれることもあるという、2りんかんでは数少ない女性スタッフの一人にお話しを伺った。
福島県相馬市生まれで、2人姉妹の次女。「姉と違って幼い頃から活発に走り回っていた私は、男の子のように育てられてきました。電車の運転士だった祖父、線路を管理する仕事をしていた父、鉄道をはじめ、他にもクルマやバイクに関わっている大人がまわりにたくさんいて、その影響も受けています。特にバイクに乗っている人がカッコよく見えて、いつか自分も乗りたいと思っていましたね。いつの頃からかツナギを着て工具を手に油まみれになるような仕事がしたいと思うようにもなりました。」
趣味も男っぽいものが多いという中城さん。例えば祖父に手ほどきを受けた釣り。音楽はロックが大好きで、自らギターやベースを手にバンド活動、ボンジョビやX-JAPANのコピーをしていたほど。
免許を取ると、バイクにのめりこむ。原付きを卒業して最初のバイクはレブル250だったが、それまでタンデムで乗せてもらったバイクとは印象が違っていた。
「自分はもっと速く走りたい、速く走れるバイクが欲しいと思い、FZR250に乗りかえました。これが凄く楽しくて、いろんなところに行きました。」
負けず嫌いな性格ではないが、バイクに跨がると速く走りたくなるという。
「マンガの『こち亀』に出てくる本田ほどじゃないけれど、性格が変わっちゃうところがありますね(笑)。」
バイクも、「外観はノーマルだけど、走ると速い!というのがカッコいいと思うんです。」とツウ好みだ。
お話しを中城さんの高校3年生の頃にまで戻そう。進路に悩んでいた時に、中城さんの性格をよく知る恩師が進学先として薦めてくれたのが整備専門学校だった。「クルマやバイクの整備も、女性が活躍できる場所になってきている。」という恩師の言葉を「そうか、その手があったか!」とポジテヴィブに受け止めた。卒業後はアドバイスの通り仙台の整備専門学校に入学した。
相馬市の実家から電車通学、友人にも恵まれ毎日のカリキュラムを楽しみながら学んでいた。
そんな平穏な日々を東日本大震災が襲い、福島の浜通り方面に住む多くの友達が被災した。幸い実家が無事だった中城さんは、震災直後からしばらく、50ccのホンダ・シャリーに物資や食料を積んで友達の元に届けていたそう。「そのシャリーは中古で手に入れたばかり、登録前のバイクだったんですが、急いで整備して市役所で特別に許可をもらって避難所や友達の家をまわりました。この時ほどバイクの便利さを痛感したことはなかったし、自分が整備のスキルを持っててよかったとも思いました。」
通学に使っていた沿岸の鉄道が寸断されてしまったため、その後は学校に近い仙台市内に移り住むことになる。卒業後半年ほど仙台市内のバイクのカスタムショップに勤務、しばらくのインターバルを経て入社したのが『2りんかん』だ。2013年3月にオープンした『仙台2りんかん』に立ち上げからスタッフとして勤務。2014年9月にはオープン直前の『水戸2りんかん』に異動となり、現在に至る。整備専門学校を卒業しているが、入社以来一貫して店頭スタッフとして働く。
「バイクをいじるのと同じぐらい、人と接して、話しをするのが好きなんです。だから店頭が楽しいし、この仕事が大好きです!」という中城さんの現在の担当はオイルをはじめとした消耗品やパーツのコーナー。先輩から「オイルはお店の人気のバロメーターだよ」と教わった。
「だからお店の中でも重要な役割りを担っているという緊張感をもっています。お客様がお乗りの車種や、乗り方、走り方などを丁寧に伺いながら、価格を含めて最適なパフォーマンスのオイルをご提案します。高性能で高価なオイルだけをお薦めするのではなく、お客様の満足を最優先してオイル選びのお手伝いをさせて頂いています。」
バイク好きで専門知識を持ち、メンテナンスも、自分でも出来ることは何でもしてきた中城さんのスキルが、ここでも発揮されているのだ。
「私を頼ってまた来店して頂けるように、日々お客様のご質問、ご要望に一生懸命お答えできるように頑張っています。バイクについて困ったことや疑問があれば些細なことでも相談して頂きたい。お客様の力になりたい。おしゃべりしにきて頂きたいと思っています!」
中城さんは昨年の11月にレースに初参加したと言う。実は「ヴァレンティーノ・ロッシの大ファン」を公言するぐらいのレース好きだが、サーキットを走りたいと思ったのは『2りんかん』に就職してからだったそう。
「職場の先輩たちが楽しそうにレース活動しているのを見て、自分も走りたくなり、会社の走行会に参加するようになりました。誘って頂いて、2りんかんが主催する2時間耐久レースに参加することになったのです。」
40分を2回走ったレースの最中は、終始ドキドキだったと言う。「桶川スポーツランドのコーナーの多いコースに重いクラッチレバーで、後半は腕がプルプルしちゃってたんですが、とにかく転ばないように、見ている同僚の笑い者にならないように必死で走っていました。きっと転んだらず〜っと言われちゃう、ネタを提供するワケにはいかないので(笑)。」
「私の人生は、人との出会いに恵まれていると思うのです!」と朗らかに笑うポジティブな中城さん。インタビューの終わりに自身にとって「2りんかんとは?」、そして「バイクとは?」と訪ねてみた。
「いろいろなことを教えてくれる場所。それが私にとっての『2りんかん』です。スタッフやお客様にも、いろんなことを教わっています。辛いことがあっても辞めたいと思ったことはないですね。」バイクが好きで用品やパーツに囲まれた生活が楽しい、バイク好きだらけの会社を心底楽しんでいるのだという。
「今は仕事も休日もバイク漬けです。バイクに対する強い思いは親も理解してくれているようで、昔から『気をつけて乗りなさい』とは言われますが、反対されたことはありませんでした。バイクは私の人生そのもの、きっとおばあちゃんになっても乗っていると思います!」
中城さんはこれまで登場して頂いた『2りんかん』の男性スタッフに勝るとも劣らない、まさに"NO BIKE, NO LIFE!"の人なのであった。
オートバイ用品専門店
ライダーズスタンド 水戸2りんかん
茨城県水戸市千波町1998
営業時間:10:30~20:00
TEL: 029-305-1189
photo: 中城理恵さん提供(バイク単体・サーキット)
photo&text: Gao Nishikawa
取材協力:
ライダーズスタンド2りんかん
http://driverstand.com