現地生レポート!・尾形明紀NASCARナショナルシリーズ初参戦記

アメリカを舞台に10年間戦い続けてきた尾形明紀が、NASCARナショナルシリーズの一角、キャンピングワールド・トラックシリーズに、ENEOS トヨタ・タンドラで初参戦した。その模様をデトロイト在住で尾形のサポーター、城 俊之がレポートする。

116日朝、アリゾナ州フェニックス・インターナショナル・レースウェイ。#35 ENEOS トヨタ・タンドラの出走準備がWin-Tron Racingのクルーによって行われている。尾形明紀はやや緊張の面持ち、ターン1を臨むピットウォールに立ち、K&Nプロシリーズの練習走行を見つめる。ピットロードを歩き、立ち止まっては走行ラインを確認している。「明日の決勝後は、ヴィクトリーレーンで待ち合わせ!」と軽口をたたく僕。尾形選手の笑顔が見えた。テレビで見慣れたドライバーたちが目の前にいる出走前ミーティング。これからナショナルシリーズで闘うのだと実感。

走行が始まる。これまで乗っていたK&Nカーより乗りやすいのだと尾形選手。しかしそのスムースな走りは、キャリアのなせる技だろう。

117日、決勝の日。セレモニーで"AKINORI OGATA"と紹介されると暖かい声援と拍手。10年かけてNASCARに自分の居場所を作ってきた尾形明紀。受け入れられているのだとわかる。停電という珍トラブルで待機させられた後、いよいよマシンに乗り込む。空気がピンと張り詰めた。

"Drivers! Start Your Engines!"

轟音が響き渡る。様々な感情が頭の中を駆け巡る中、僕は左手を大きく挙げてサムアップ。コクピットからサムアップが返ってきた。グリーンフラッグが降られ、V85700ccのレースカー34台が一斉にスタート。尾形選手もしっかりとついていった。早々のクラッシュでオイルがまかれ、その除去剤によって、トップドライバーさえもコントロールを乱されている。尾形選手は冷静な走りで目の前のクラッシュをかわしていく。気付けば28位スタートから18位に躍進。「デビュー戦でTOP20フィニッシュしたらスゴイことだぞ!」

しかし45周目、ビジョンモニターに低速で走る#35 ENEOS タンドラの姿が映し出される。ピットレーンからそのままガレージへ。レースに戻れるのかとクルーに聞くと、パーツを換えて戻ってくるとの返事。しかしほどなく、損傷が大きく復帰は不可能との判断。僕は言葉を失いガレージに行くことさえできなかった。

レース後、サポーター仲間と挨拶だけのつもりで尾形選手のホーラーを訪ねた。

「残念。悔しいね。すごい音がしてね。リヤギヤが壊れちゃった。」と尾形選手。「でも18位まで上げましたよね!すごかった。」と僕。「TOP10いけるかな?と思ったんだよね。よくばり過ぎたかな?」ようやく笑みがこぼれた。

10年間挑戦し続けてきた尾形明紀と、それを支えてきた多くの人たちの思いが詰まった2日間が終わった。数日後にはスポンサーへの挨拶やイベント参加のために一時帰国するという尾形選手。その目はもう2015年シーズンを見据えているに違いない。

TEAMオンザロード、尾形明紀をサポート!

尾形明紀のNASCARナショナルシリーズ初参戦の報を受け、本誌発行人GAOが中心となり、急遽"TEAMオンザロードを結成、尾形の活動をサポートすることに。フェニックスで開催されるレースまでわずかな間に、下記の企業、個人の皆さんがサポートを表明してくれた。

株式会社オリオンエース(http://www.orionace.com
アピオ株式会社(http://www.apio.jp
Restaurant&Stay花闊歩 岡村大輔(http://hanakappo.com
MAC TOOLS 平湯 平湯康一郎
浅見 純
渡辺海大
スノコ しげぞう
城 俊之
池知 友希

2015年もTEAMオンザロードは、NASCARドライバー尾形明紀を応援します!

尾形明紀(おがた・あきのり)

14歳でモトクロスバイクをはじめて以来のレース人生。ミニカーがきっかけでNASCARの世界に、国内のミジェットカーレースを経て03年にNASCAR初参戦。10年には本場ノースカロライナ州に移住。K&Nプロシリーズを経て、2014年11月、NASCARキャンピングワールド・トラックシリーズにステップアップ。
http://www.akinoriogata.com

城俊之(じょう・としゆき)
映画「Windy」の車載カメラの映像に魅せられ、大学時代にはライダーとしてレースに参戦。98年にもてぎで見たNASCARに衝撃を受けて以来のNASCARファン。2010年よりミシガン州在住。かつてNASCARを通して尾形明紀と出会い、今夏デトロイトで再会。ボランティアスタッフとして尾形をサポート中。

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