レポート・パート3からそう時間が経っていないが、ヤマハの三輪バイク、トリシティのカスタムプロジェクトは、前回『急告!』で宣言した通り、この12月にお披露目を果たすことができた。
最初のお披露目は12月4日に横浜・みなとみらい地区にあるパシフィコ横浜で開催された『ヨコハマ・ホットロッドカスタムショー』。そして2週間後、さらにブラシュアップした姿を、12月18日に東京・お台場の『稲妻フェスティバル』でもご披露した。
今回は駆け足でここまでの道のりをご紹介、さらにお披露目の様子と、ロードインプレッションをお送りしよう。
ここでプロジェクトのレポートパート3をお送りしたのは11月27日。その段階で、”FUNNY’S CUSTOM SERVICE”(ファニーズ)川口さんの工房での製作作業は大詰めを迎えていたのだ。
時はさかのぼり、9月下旬。スケッチをもとに、フレームに直接特殊なウレタンフォームを貼付け車体のスタイリング作業がスタート。
僕がアメリカで調達したヘッドランプとテールランプも、スタイリングの重要なキーになることから、取り付け位置なども慎重に検証。
シェイプが決まると、ウレタンフォームをベースにマスター型を製作する。このマスター型の段階で、パテやサンドペーパーなどを用いての表面仕上げを、どれだけキレイに行っていくかで、最終製品(ここではトリシティの外装)のクオリティの善し悪しが決まるのだ。
マスター型から抜き型(モールド)を製作、そこに強度やひずみなども考慮しながらFRP樹脂と数種類のガラス繊維(クロスやマットなどと呼ぶ)を貼り込んで、車体の外装が形作られる。
出来上がった外装に、必要な加工(カットや穴あけと、それにまつわる仕上げの成形など)を行い、表面を平滑に磨き上げ、いよいよ塗装に入ってゆく。
文字にすれば数行だが、川口さんは何日もかけてこの工程を進めてゆくのだ。
僕はといえば、折々で川口さんのもとを訪ね、彼とともに進捗を確認。意見を交換しながら、修正や変更事項を摺り合わせ、互いが納得できる方向を見つけて、製作を進めるというプロセスを繰り返した。
灯火類の他に僕がこだわったのが、フロントホイールへのムーンディスクの装着。前二輪のトリシティならではのドレスアップになること間違いなし!と踏んでいたからだ。
そして迎えた12月3日、『ホットロッドカスタムショー』搬入当日。午後から展示ブースを設営。ここではバイクガレージのスペシャリスト、旧知の『ダイナオガレージファクトリー』の力をお借りした。出来上がったのは雰囲気たっぷりな『RoadTrip63』の仮設ショップ。そう『RoadTrip63』は僕GAOがプロデュース、デザインしているライフスタイルブランドで、今回の『トリシティ』カスタムプロジェクトは、いわばそのブランドプロモーションの一環でもあるのだ。
そして搬入時間も終了に近づいた17時、埼玉のファニーズからトリシティ、”Road Tripper”号がやってきた。
この段階までに車両の名称は”Road Tripper”に決定していたのだ。
直前の数日は睡眠時間を大幅に削って仕上げの作業を行ってくれた川口さん、何と横浜の会場に向かうバンの中でまで、作業を続けてくれていたと言うから頭が下がる。その努力の結晶、バンから降ろされた”Road Tripper”は、僕が思い描いていたカタチを遥かに越えた素晴らしい出来映え。まさに鳥肌ものだった。
最後まで悩んだカラーリングは、僕の宝物のひとつ、僕が生まれたのと同じ年月に生産された、コールマンのランタンをオマージュした。
翌4日のショー当日、イベントの重要人物である”JK design+products”神保くんを迎え、彼自身が製作したデカールを車体に貼ってもらい、”ひとまず”の完成をみた”Road Tripper”は、訪れた海外のメディアを含む来場者から、注目とたくさんの高評価を頂いた。すべての反応、反響が僕たちにとって、大きな喜びとなった。
『ホットロッドカスタムショー』の段階での未完成ポイント、リアキャリアやバッテリーへのアクセスリッドの追加、ミラーの取り付け、灯火類の配線、タイヤの交換などを済ませ、塗装の再仕上げを行って臨んだのが、2週間後の『稲妻フェスティバル』。アウトドアショーであり、お天気にも恵まれたことから、太陽の下でのお披露目となった”Road Tripper”は、一段と大きな注目を浴びていたように思う。イベントの性格の違いから、来場者のファミリー率が高く、女性や子供たちからの反響も嬉しいものだった。
実は、直前に交換したオフロードパタンのタイヤがノーマルよりも太かったことから、フロントフェンダーが取り付けられず、ここでも完璧な状態とはならなかったのだが、青空の下で過ごした第2回目のお披露目も無事に成し遂げることができた。
稲妻フェス後にひとまず納車となった”Road Tripper”だが、これからのミッションはトレーラーに積載してキャンパーで牽引、アウトドアフィールドに連れ出すこと。現段階でトレーラーは入手済みなのだが、牽引する側、つまりキャンピングカーのトレーラーへの配線に手間取っており、実現は新年に持ち越しとなった。
フロントフェンダーの製作、装着も新年のお楽しみとなったことだし、”Road Tripper”が完璧に仕上がるのを待ってアウトドアにでかけることにしようと思う。
納車された”Road Tripper”は、非常に快調、快適である。お披露目の際に、何人かの方から「これ、凄くカッコいいけど(女性からは可愛いという意見も多数!)、走れるんですか?」というご質問を頂いた。それに対しては僕も川口さんも「もちろんです!」と応えていた。
そもそもバイクに乗ることも大好きな川口さんゆえ、手がけるカスタムに対するポリシーは、『車両本来の機能、走行性能を損なうようなカスタムはしない。』なのだと、初対面の段階で聞いた。もちろん僕もそれを望んでいた。だから当然、”Road Tripper”はとても快調、快適に走るのである。
最後にご紹介する写真は、師走の喧噪の中、東京の街を駆ける僕と”Road Tripper”。
街中での注目度も高く、信号待ちでスマホのカメラを向けられることも少なくない。そして”Road Tripper”に注目してくれる人々が、一応に笑顔であることが、仕掛人として何よりも嬉しい。
2017年は”Road Tripper”号とともに、もっといろんな場所に繰り出したいと思う。もちろんトレーラーに積んでアウトドアにも。そんな様子を、またここでレポートとしてご報告しよう。
photo: Kazumasa Yamaoka, Gao Nishikawa
text: Gao Nishikawa
special thanks: FUNNY’S CUSTOM SERVICE(http://funnys-cs.com/)/ MOONEYES / Dainao Garage Factory / MacKenichi / Mitsuru Jimbo