とても綺麗なWLAである。聞けばこの個体、ハワイ在住のマニアが所有していたもの。日本に輸入後、なぜかそのまま15年もの間、コンテナの中に保管していたのだとか…。
「軍用のハーレーダビッドソンを手に入れたんだけど、GAOさん興味ありますか?」とオートジャンクションの安井一郎さんから連絡が入った。
ミリタリージープのオーソリティーであり、ご自身が2台の陸王をはじめ複数のバイクを所有する好き者だからこそ、そんな珍しいシロモノが向こうからやって来るのだろう。
そこでさっそく、東京・板橋にあるオートジャンクションを訪ねた。
実際に現車を目の前にしてみて、とても綺麗なことに驚く。
「『ボルボの軍用車を整備して車検を取って欲しい』という埼玉のお客さんの手元にあったものを、偶然に譲り受けたんです。なんでも、2000年にハワイから輸入して、そのまま乗らずにしまい込んでいたらしいのです。」
ハーレーダビッドソンWLAは45キュービックインチ=約750ccのフラットヘッド・エンジンを搭載、主に第二次世界大戦中に活躍した軍用のモーターサイクルだ。世界中の不整地=オフロードでの走破性も考慮して設計、頑丈でありながらもハーレーのラインナップ中でも希有な、コンパクトで軽い車体をもつことが大きな特徴である。ジープの元祖であるウイリスMBに通じる、凝縮された機能美が最大の魅力とも言えよう。
「チェックしてみると、そう手間をかけずに走り出せそうなので、整備して楽しもうと思っています。」
なるほど、これは楽しそうだ。エンジンに火が入ったら、また取材させて頂こうと思う。
アメリカでレストアされたのだろうか、オリーブドラブのペイントが真新しい。フロントフォークに取り付けられたレザー製のホルダーは、トンプソンサブマシンガン用。
コンディション良好なレザー製のサドルバッグはリプロダクション品か。
750ccのフラットヘッドエンジンを、フットクラッチとハンドチェンジで走らせる。フレームの下部に取り付けられたアンダーガードも軍用ハーレーならではの装備だ。
レザー製のサドルシートに、味わい深いデザインのメーターまわり、真鍮製と思われるコーションプレートなど、手作りの時代に生み出されたプロダクツだけがもつ重厚な佇まいだ。
下の写真は、車両とともに輸入されたハワイ州が発行した書類。年式と車名を表す「42WLA」と、2000年5月の日付が。
ユニークな顔つきの車両は、珍しいボルボ製のウェポンキャリア。スペアタイヤの横に見える棒状のパーツは、なんと露出したステアリングコラムだ。
photo&text: Gao Nishikawa / special thanks: Auto Junction (http://www.autojunction.co.jp)