アメリカで一人戦う日本人NASCARドライバー、尾形明紀と知り合ってもう何年になるだろう。今の彼は日本に住みながらチャレンジしていた頃とは比較にならないほど、自信にあふれ前向きだ。そんな尾形の戦いの日々を、僕GAO NISHIKAWAの目線でお話ししてみようと思う。
アメリカ在住の尾形明紀とはSkypeで話をする。彼はiPhoneで、いろいろな場所で僕のコールを受信している。自宅ならゆっくり話せるが、レーストラックにいれば爆音に邪魔され会話が困難だ。スポンサー訪問でアトランタやニューヨーク、ロスにいることもあれば、移動中の運転席にいることも。先日コールしたら「今、レースカーを積んだトレーラーを運転してます。一人だし、目的地まであと4時間はかかるから、ゆっくりはなせますよ(笑)」との返事。「自分でトレーラー運転してレーストラックに向かってるの?」と聞くと「レースの時はクルーに運んでもらいますが、今日はスポンサーとその家族にマシンを見てもらうイベントで…」という返事が。
今年はENEOS USAをはじめ、TOTO、KUBOTA、KAJIMAの各現地法人の協賛によりK&NプロシリーズEastに参戦中。上位カテゴリー参戦についても鋭意体制を整備中だ。
8月のアイオワ・スピードウェイ参戦マシン。このレースでは自らが設立、運営している子供の夢を実現するためのイベントや募金活動を行うファウンデーションのロゴを冠して参戦した。
尾形には、レースをサポートしてくれるクルーはいるが、専任スタッフや、スポンサーとの交渉を担ってくれるエージェントはいない。一人で頑張っている尾形への共感もあって協賛に前向きなのが、日本企業の現地法人の皆さんだ。尾形のレースカーには、メジャーな日本企業のロゴが複数貼られている。しかし尾形がフル参戦できるほどの支援は受けられていない。決して余裕のある挑戦ではないのだ。それでも尾形は言う。「スポンサーやファンに喜んでもらい、その結果として僕がNASCARドライバーでいられることに感謝している。」と。異国でたった一人で、ひたすら前向きに戦っている尾形明紀の姿に、僕はたくさんの元気と勇気をもらっている。だから、ここ日本からも僕はささやかながらエールを送り続けたいと思っている。
text: Gao Nihsikawa
special thanks: Akinori Performance(www.akinoriogata.com)