最新のワンボックス、日産NV350キャラバンに乗った。

オンザロードマガジンの海外向け発送を依頼している国際宅急便OCSや、編集部の地元を管轄す目黒警察署交通課、それに近所の工務店など、NV350を日常的に数多く見かける。このワンボックス車については、昨年、大磯ロングビーチの駐車場を舞台に開催された、メディア向けの日産LCV(小型商用車)試乗会の場で、その特徴などを見聞きしていた。しかし実は、路上で乗る機会がないままでいた。そこで今回、一週間にわたりNV350キャラバンを借り出し、都市部や高速道路など、さまざまなシーンで使ってみることにした。さらに、ちょうどこの期間中に開催された国産旧車イベントの会場に出かけ、懐かしい日産の歴代ワンボックスにも会ってきた。

NV350キャラバンとは

日産キャラバンは、ミニバンという概念が生まれるより遥か以前、1970年代初頭から存在しているキャブオーバー、ワンボックスタイプ・バンのロングセラー。そして言うまでもなく、トヨタのハイエースとともに切磋琢磨しながら進化を続けてきた、日本が誇る働くワンボックスの代表選手である。2012年のフルモデルチェンジを機に、同社のグローバル戦略の一環として”NV”の名を与えられ、”NV350キャラバン”として現在のボディスタイルになり、今日に至る。そしてこれまでの歴史を踏襲するように、毎年バージョンアップ、使い勝手や安全性などの向上がはかられているのだ。

試乗車のプロフィール

今回日産自動車から借り受けた”NV350キャラバン”は、ラインナップ中で最もコンパクト、4ナンバー標準ルーフ2WDモデルの最上級グレード、プレミアムGX。『エマージェンシーブレーキパッケージ』搭載車だ。

搭載される2,488cc、129馬力(95kW)のディーゼルエンジンは、36.3kg(356N・m)の大トルクを発揮する。商用バンらしからぬボディカラーは、オプション設定の『タイガーアイブラウン』なるダークなメタリックカラー。

バイクを積んでみた

仕事柄、段ボールで梱包され印刷物や商品、撮影機材など、さまざまなものをクルマに積み込んで移動する機会が多い。ここ10年以上は、ステーションワゴンタイプのクルマばかりに乗っており、ラゲッジスペースに入りきらない荷物はルーフに、自転車はリアハッチに背負わせるキャリアに載せている。しかし、積みたくても積めなかった大モノもあるのだ。そこで今回、別途ラダーを用意してまで試したかったのが、バイクの積載。

昨年大磯でNV350を目の前にした時、荷室のあちこちにフックなどを取り付ける為のネジが埋め込まれていることを知った。これは業務用バンとしてはもちろん、ホビーでバイクやマウンテンバイクを積んであちこち旅する人にも嬉しい配慮だ。だから今回、ただバイクを積むだけでなく、この埋め込まれたネジ、その名も『ラゲッジユーティリティナット』を使って、バイクを固定してみた。使用に際しては、ホームセンターで市販のM6規格アイボルトを入手、タイダウンベルトと併用した。このラゲッジユーティリティナットの使い易さ、信頼性は想像以上。重たくて不安定な積載物であるはずのバイクを積んだまま、高速走行なども試してみたが、心配もストレスも皆無。この小さな標準装備は、間違いなくNV350の魅力のひとつと言えよう。

一般道路、そしてハイウェイを走ってみた

都内を中心に、一般道を日常使用するシーンでも、高速道路でも、ディーゼルエンジンらしい力強いトルクは頼もしいことこの上ない。コクピットも非常に乗用車的で快適、4ナンバー車ながら、後部座席の乗り心地も同乗者から好評だった。『エマージェンシーブレーキ』を搭載しているという安心感も手伝って、ドライバーのストレスはとても小さい。エンジンが運転席と助手席の間に積まれていることから、低速域では大きめのガラガラ音が耳につくが、速度が上がるにつれロードノイズや風切り音などがそれを相殺してくれ、大トルクの気持ちよさと相まってクルマを運転する楽しささえ感じさせてくれた。実用的な商用バンというプロフィールを持つNV350だが、流れの速い国道や高速道路などを多用しての長距離移動も得意科目なのであると知った。

旧い日産ワンボックスに触れた

ラゲッジスペースと一体の広大な室内空間をもつ商用車として生まれたワンボックスタイプのバンは、日本の生活、道路環境の中での使い易さを考えながら進化を遂げてきた。先日静岡で開催された国産旧車オーナーズクラブの主催よるイベント『ナカヨシホットオールズミート』に、あえて最新の日産ワンボックス、NV350で出かけた。

会場には数多くのスポーツカーや乗用車に混じって、懐かしい昭和のワンボックスカーが集まっていた。そこで最後に、NV350の先祖・先輩にあたる日産ワンボックスをご覧頂こう。

上段は70年代に生産・販売された初期型『キャラバン』の4ナンバーバン。中段のキャラバンは5ナンバーを付けているのでワゴンか。どちらも多摩エリアから自走で参加。車高が下げられていることを除き、カスタムは最小限と思われる。下は主催団体スタッフの一人が乗ってきた日産製小型ハイルーフのワンボックス。70年代後半から約10年間にわたり生産された『チェリー・バネット』とともにある生活を、ファミリーで楽しんでいる様子が実に微笑ましい。


試乗を終えて

先日試乗、レポートをお届けした先進技術満載の『日産セレナ』はミニバンならではの快適性を備えた、言わば背の高い乗用車だが、たくさんの遊び道具を満載して、となると積みきれないという事態にも遭遇するだろう。バイクなど、大きな遊び道具を積みたいならばなおさらだ。ワンボックスタイプのバンは荷物を積載するための機能を充実させた商用車。さらに最新型には快適性能や安全性にも磨きがかかっているから、仕事だけでなく、便利なファミリーカーとして、レジャーの道具として好適だ。ディーゼルエンジンならではのトルクがもたらすドライブの楽しさも特筆すべき点だろう。今回の試乗で、あらためてワンボックスがもつ無限の可能性を再認識した。

photo&report: Gao Nishikawa

special thanks: NHOA(Nakayoshi Hot Old’s Association)、日産自動車株式会社

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