日本の並行輸入車、アメリカ車好きのために。 Wildstyle.代表・JDSプロデューサー 伊勢 徹

右側通行の国からの並行輸入車を日本で走らせるためには、改善が必要なポイントがある。
その中でもヘッドライトの光軸に着目。
「輸入車のオーナーが心おきなく愛車との生活を楽しめるように。」と自らオリジナルの対策パーツを開発・発売している伊勢徹さんにお話しを聞いた。


SUVやピックアップトラックを中心にUSトヨタの新車を自社で買い付け、輸入、販売している茨城県水戸市のwildstyle.(ワイルドスタイル)に、代表の伊勢徹さんを訪ねた。
「初めての愛車は赤いトヨタスポーツ800のペダルカー、写真の中の当時の僕はいつもミニカーを握りしめていました(笑)。中学生の頃には、ドラマ『白バイ野郎ジョン&パンチ』を見てカリフォルニアに憧れを抱くようになりました。」
その頃に映画館で10回以上観たというのは『マッドマックス』。
大人になってもそれらの熱は冷めず、ミニカーコレクションは今も続いているし、マッドマックスの登場人物『グース』のバイク(のレプリカ)を愛車としている。

そんな伊勢さんの最初の仕事はディーラーの整備士だったそう。
システムエンジニアや、カーオーディオ取り付けなどの仕事も経験、カー用品店に勤務した際は経営のイロハを学び、クルマの買い取り店では売買のノウハウを身につけた。
その後独立して立ち上げたのが"wildstyle."だ。
「当初はジープ・チェロキーを専門に、点検・整備を丁寧に行い認定中古車のようなスタイルで車両を販売していました。」
この事業を通してアメリカに憧れた少年時代を思い起こし、USトヨタのピックアップも手がけることに。その誠実な人柄ゆえ、「一般の人たちが持ちがちな並行輸入車ショップ特有の怪しいイメージがイヤで、ディーラー時代のツテを頼って、日本向けの改善を入念に行うことを心がけていました。お客様が車検の時に苦労しないようにしたかったのです。」と伊勢さん。
よりよい、安心なクルマを提供したいとの思いから、新車中心の輸入販売にシフト、現在に至る。


5年ほど前、道路交通法・車両運行法の改正にともない、98年以降の輸入車に装着されている右側通行用のヘッドライトのロービーム光軸に関する検査が厳格化されるという情報を耳にする。
「自分が販売しているUSトヨタの車両はもちろん、今までのお客様、さらには日本中の輸入車オーナーにも関わる一大事。自分が対策を考えなければという使命感に駆られました。」
そこから試行錯誤、ヘッドライトのバルブ(電球)自体の形状を工夫することで、光軸やカットラインを補正することが可能であるという結論に達する。
本業はクルマの輸入販売だが、伊勢さんならではのノウハウ、ネットワークによって開発・試作が繰り返される。
そして一昨年、製品化・販売にこぎつけたのが、"JDS"のブランド名を冠したオリジナルの『並行車・逆輸入車専用H4バルブ』だ。

「右側通行の国のクルマをそのまま日本に持ってくると、ヘッドライトは対向車線側を照らすことになる。車検にパスするか否かの前に、これはマナーとか、安全性という観点からも問題だったわけです。しかし対策用のバルブを作るにしてもバリエーションが必要。まだすべての車種に対応できていないのが現実です。思いのほか時間も開発費もかかって大変なのですが、国内の輸入車、アメリカ車を愛する人たちのために、彼らが本当に必要としているものを提供できることに、大きなやり甲斐を感じています。」そう言って伊勢さんは少し照れくさそうに笑った。

伊勢さんの愛車をご紹介。スープラは年式・型式の異なるミントコンディションの2台を所有。


マッドマックスのグースレプリカ。あえてカワサキではなく高年式のスズキ車、カラーリングもオリジナル。


昔から好きだったスズキ刀。これらは皆、日常的に乗っているが、コレクションと言っていいだろう。




長年クルマ業界で生きてきた。
その経験やノウハウが、同じクルマ好きの役にたてれば嬉しい。
そんな思いで伊勢さんが手間ひまをかけ、試行錯誤しながら開発、製品化したのが『並行車・逆輸入車専用H4バルブ』だ。
このバルブを装着することで、並行輸入車であってもヘッドライトが対向車線側を照らすことなく、もちろん車検対応になる。
異なるサイズも順次発売予定とのこと。ブランド名のJDSは"JAPAN DOMESTIC STYLE"の略だ。

伊勢徹さん
東京生まれ茨城育ち。
父上の影響でクルマ好きに。
ディーラーやカーステレオ専門ショップ、カー用品店などを経て独立、USトヨタを中心に、アメリカからの並行輸入・逆輸入新車を販売しているwildstyle.代表。
自らの会社『有限会社光テック』でJDSブランドを立ち上げ、輸入車用の車検対応ヘッドライトバルブを開発、製造、販売。
アメリカのドラマや映画、ミニカーをこよなく愛し、休日はバイクでツーリングを楽しんでいる。

取材協力
wildstyle.
茨城県水戸市千波町1439-8
TEL:029-305-6623
http://www.wildstylecars.com

photo&text: Gao Nishikawa

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