ブリヂストンのクルーザー用ニュータイヤ『バトルクルーズ・エイチゴーマル』を試す。

アメリカンクルーザーの醍醐味は、大排気量エンジンとロングホイールベースがもたらすおおらかな乗り味にあると言い切ってしまおう。足回りやブレーキに目がいくのはその次だ。ではタイヤについてはどうか。ハーレーに乗る二輪車安全運転指導員、恩田浩彦と、「アメリカンクルーザーにとってのタイヤとは?」を語り合うとともに、ブリヂストンのクルーザー専用ニュータイヤ、『バトルクルーズH50』を試乗、レポートする。テスト車両はハーレーダビッドソン スポーツスター(左/2000年型XL1200S)とロードグライド(2001年型FLTR)。どちらも足回りやブレーキなどに手を加えてある。

 恩田さんのロードグライドは車重約350kg。僕GAOが乗るスポーツスターでも240kgある。どちらも最新型はさらに重い。それにライダーを加えた総重量を支えるのがタイヤの仕事だ。ヘビー級だから、特にコーナーやブレーキングでは相当な負荷がかかると想像できる。しかし、サーキットや峠道を走るスポーツバイクであればいざ知らず、アメリカンクルーザーとなると、タイヤに無頓着なライダーも多いのではなかろうか。

 ハーレーに乗って二輪車安全運転指導員を務める他、全日本選手権を含むレースのMCとして活躍、タイヤについても造詣が深い恩田さんは言う。「ハーレー用のタイヤは、どれもコツコツと硬い感触だった。重さを支えるために、サイドウォールの剛性をあげているのだろうね。長年の経験から、ハーレーのタイヤはそういうものだと思いこんでいたところもある。」
 肉厚で快適なシートや、柔らかめなサスペンションのお陰で気がつきにく部分だが、僕にも思い当たる経験がある。総じてロングライフ指向で硬めの接地面ゆえだろう、滑り出しが早いという印象をもっている。
 ニーグリップという概念がないハーレー独特のコーナリングについてはどうか。「簡単に言うと、車体をゴロリと寝かすようにしてリアで曲がる感じが一番楽だと思う。」と恩田さん。

 昨年末に、ブリヂストンが満を持して発表した、『バトルクルーズH50』は、ハーレーダビッドソンを中心としたアメリカンクルーザー専用タイヤだ。『バトラックス』をはじめとした同社の高性能タイヤ作りのノウハウを盛り込みながら、スムースで快適な乗り心地や、ロングライフ性能などを重視した、クルーザーライダーが求めるタイヤを標榜して設計したという。
 この『バトルクルーズH50』を、愛車に装着、200kmほどを走ってみての感触を恩田さんはこう語る。「よく曲がるタイヤだね。これまで履いたどのハーレー専用タイヤより軟らかくしなやか。だからといって、直線も、カーブでもフラつくようなことは皆無。安定してコーナリングできるから、立ち上がりで気持ちよくスロットルが開けられるのもいい。」

 本場アメリカでも展開しているというが、日本の道を走るクルーザーにこそふさわしいと言える、フロントタイヤのグリップにも注目したい。「フロントが路面を掴んでいるのがよくわかる。だから制動時の安心感が高いし、自然なコーナリングができる。これは今までにない感覚だね。」と恩田さん。アメリカと比べ、島国・日本の道は言うまでもなく、ブレーキング、コーナリングの頻度が高い。ゆえにフロントタイヤへの負荷が大きく、その接地感がとても重要になるのだ。恩田さんほどのライディングスキルがない僕が、比較的軽量なスポーツスターで試しても、その優位性は充分に体感できるものだ。
 トレッドパターンもアメリカンクルーザーによく似合う。「気温がが低くても暖まるのが早い印象で、安心感が高いね。」と恩田さん。暖かくなってくれば、さらに高いグリップが期待できそう。そしてロングライフ性能にもおおいに注目だ。

 「世界最大手のタイヤメーカーが、その技術を存分に注ぎ込んでハーレーライダーのための新しい選択肢を用意してくれた。それが嬉しいね。」と恩田さんは笑顔を見せた。長距離ツーリングでこそ真価を発揮してくれそうな『バトルクルーズH50』を履いて、今シーズンはどんな景色を見に行こうか。恩田さんとそんな話しをしながら、僕も笑顔になった。

恩田浩彦:東京を拠点にバッグのデザイナーとして活躍するかたわら、長年にわたり二輪車安全運転指導員を務める。ヘビー級のハーレーを手足のように操りながらのデモンストレーションは圧巻。二輪・四輪、そしてオン・オフを問わず、レースMCとしても活躍。シーズン中は全国のサーキット、モトクロスコースで、その美声をとどろかせている。新車で購入、仕事の移動にも多用しているという愛車ロードグライドの走行距離は20万キロを越えている。

GAOニシカワ:ハーレーダビッドソン ロードキングによるアメリカ大陸横断を経て、イラストレーターとして独立。夢だったルート66全行程走破を果たした後に『オンザロードマガジン』を立ち上げ、発行人・編集長を務める。ロードインプレッションでさまざまなバイクに乗るが、近年愛車スポーツスターでのツーリングの機会はほとんどなし。これを機に走行距離を伸ばしたい。今回の取材を通して、ライディングスキルを磨くべく、『恩田塾』への入門も決意。

text: Gao Nishikawa


今回『バトルクルーズH50』への組み替えをお願いしたのは、恩田さん、GAOがいつもお世話になっている東京・世田谷の『スピードスター』。あらゆる車種のタイヤを扱う、モーターサイクルタイヤ専門のプロショップだ。代表の水口和明さん(写真中央)がハーレーオーナーゆえ、ハーレーライダーからも絶大な信頼を得ている。

東京都世田谷区世田谷1-48-8

03-3427-1351http://speedstar.jp

photo: Kazumasa Yamaoka text: Gao Nishikawa
special thanks: 株式会社ブリヂストン 0120-39-2936 www.bridgestone.co.jp ブリヂストンモーターサイクルタイヤ株式会社

Related article

関連記事