技術大国ドイツ。国営の産業博物館からベンツやBMW、ポルシェといったメーカー直営の博物館などなど、メカ好きならば一度は訪れてみたいミュージアムがたくさんある。ジンスハイム交通技術博物館もその一つだ。
ドイツ、フランクフルトからアウトバーンを南東に走ること1時間。屋上に超音速旅客機「コンコルド」と「Tu144」2機が並んで展示された建物が目に飛びこんでくる。二棟の広大な展示ホールからなるジンスハイム交通博物館だ。逸る気持ちを抑え、まずはエントラントとギフトショップがあるホール1から見ていくことにする。入ってすぐのエリアにはアメ車やアメリカンモータスポーツをテーマとしたディスプレイが展開している。奥に進むと第二次世界大戦の世界各国の戦車や軍用車両がジオラマのように展示されており、戦後の働くクルマ達も所狭しと並んでいる。ここまでの印象は雑多の一言。特に前回スミソニアンの空間を贅沢に利用した展示を見たばかりということもあって、この展示はまさに「カオス」の世界だ。館内に収まりきらない大戦後の戦車は屋外にずらっと並べられているし、天井から吊るされた歴史的な機体のみならず様々な航空機が屋上に内見可能な状態で展示されている。
ホール2は自動車がメインで、F1マシンや世界最速記録をマークしたロケットカーに始まり、大衆車から一品モノのエキゾティックカーまで、広いホールを埋め尽くすように収められている。そんな中でも、地元のドイツメーカー、とりわけ大戦前後のダイムラーベンツやマイバッハのコレクションは必見だ。
そしてここでしか見ることができない展示物だ。文頭に書いたが、ここには引退したコンコルドと「コンコルドスキー」と揶揄されるソ連時代のソックリ旅客機Tu-144が並んで展示されているのだ。機体内部に入って細部まで見比べることもできるので、訪れる機会があったらこれは是非体験してほしい。
実はジンスハイムに隣接したシュパイアー市に、この博物館の別館にあたるシュパイアー交通技術博物館があり、ソ連版スペーシャトル「ブラン」の試験機などが展示されている。残念ながら今回はここまで行くことはできなかったのだが、こちらも次の機会に是非報告したい。
ホール1に入ると、まずアメリカンな展示が広がる。シボレー・インパラコンバーチブルとフォード・ギャラクシー・スカイライナー。コンコルドとTu144、並んでの展示はここだけ。
Sports Cars: 綺麗にレストアされたポルシェ356とアストンマーチンDB5。/バハマのナッソースピードウィークに出走したレース仕様とノーマルの1955年式ベンツ300SLガルウィング。/1987年フェラーリが創業40周年を記念して発売したF40なども。
Racing Cars: 93年と94年にナイジェル・マンセルがアメリカCARTシリーズで走ったマシン。後方に見えるNASCARはレプリカ。/ホンダF1黄金期のマクラーレン・ホンダMP4/5(手前)とマンセルのウィリアムズルノーFW14(右奥)。
Motercycles: アメ車展示に並ぶ1930式インディアン・スカウトと1948年式インディアン・チーフ。/モトコンポ以前の折り畳みバイク各種。ザックスの47ccエンジンを搭載する伊カルニエリ社のモトグラジエラ、伊ベネリ社のシティバイク、そして日本のダックス・ホンダ。
Tractors: 赤いボディが特徴的な1958年製ポルシェディーゼル・ジュニア108。単気筒822cc(14ps)エンジン搭載でシリーズ最小モデル。/現在もトラクターを生産しているランボルギーニ社の1968年式「C553」。
Rare Cars: メッサーシュミットKR200にVWのエンジンでプロペラを回して推進するカスタムカー。/1961年から1968年まで生産された市販水陸両用車アンフィカー770。/1953年に西ドイツ陸軍用に試作されたポルシェ597「ヤークトワーゲン」。
<写真下>Military: 旧ドイツ軍のキューベルワーゲンとSd Kfz7。/ジープの元祖、大戦中に大活躍したアメリカのウィリスジープ。/ソ連の1943年式GAX-67B、54psエンジン搭載の4WD。/1938年式メルセデスベンツG4は副変速機付き後4輪駆動の6輪車。
photo&text:Kenny Nakajima
ケニー中嶋:東京で生まれ欧州で幼少期を過ごし、現在は南カリフォルニア在住。各地で目にした自転車からスペースシャトルまで、あらゆる乗り物への愛と好奇心を原動力に、今日も世界中を飛び回っている。