世界初の量産小型四は、戦前に我が国で設計、戦中まで生産されるも、現存数わずか数台だという。
貴重な『くろがね四起』が新たにレストアされ、現代に蘇った。
オートジャンクション代表の安井さんの特命を受け、9月25日朝、僕は御殿場に向かっていた。
安井さんより、かねてからこのプロジェクト概要は伺っていたが、モノクロ写真でしか見たことがない『くろがね四起』が現代に蘇り、走る姿を拝むことが出来るという。
それだけでも興奮を禁じ得ないではないか!
ちなみに『四起/ヨンキ』の名称は、ヨンク(四輪駆動)という言葉が生まれる前の呼称、四輪起動にちなむと言われている。
お披露目会場には、朝から数百人のメカ好き、クルマ好きが集まっていた。
クラウドファンディングも活用して資金を集め、レストアを成し遂げた立役者、『防衛技術博物館を創る会』代表の小林雅彦さんのご挨拶を経て、くろがね四起のVツインエンジンに火が入る。
小気味良いサウンドが轟き、軽快に走る姿に来場者の熱い視線が集まった。
「元の持ち主がこの車体を私に託してくれる際の条件が、『必ずレストアして走らせること』でした。まだ完璧ではありませんが、多くの方に見て頂き、世界に誇るべき日本の技術を、後世に残したいと思っています。」と言いながら、終始誰よりも嬉しそうな小林さんの笑顔が印象的だった。
元のオーナーのもとから、キャリアカーで運び出される途上の車両。こんな状態からレストア作業がはじまったのだ。
レストア着手前のくろがね四起のハンドル周り。
ダッシュボードのプレートには、名称:九五式四輪起動小型乗用車、製造会社:日本内燃機株式会社などの文字が。
完全な状態に再生され、外観も美しく仕上げられたエンジンが、同じくしっかりと再生された車体に収まった。
エンジンはなんとV型二気筒の1,300ccだ。
軽快なサウンドと懐かしい香りに、多くの来場者が酔いしれた。
「くろがね四起」レストアプロジェクトの立役者小林雅彦さん
米・独を代表する当時モノミリタリーヴィークルたちも登場!
お披露目の会場には、くろがね四起と同世代、アメリカ製のウィリスジープとドイツ製のキューベルワーゲンも登場した。もちろんすべて貴重な当時モノ、珠玉の産業遺産だ。
photo: カマド キュリアス編集室/Gao Nishikawa
text: Gao Nishikawa
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