フォードのグローバルカーとして誕生したフォーカス、第3世代のモデルが6年ぶりに日本市場に導入された。激烈なシェア争いが展開されるCセグメントのハッチバック市場において、どのようにその存在感を示すのか。オンザロードマガジンが検証してみた。
アメリカ車にはオンリーワンなクルマが多い。マスタング、エクスプローラーなど、どれも他とは代え難い魅力を持ち、それゆえ購入するユーザーも他と比較しながら購入を検討するケースが少ない。だが、新たにフォード・ジャパンのモデルラインナップに加わったフォード・フォーカスは少し違う。ワンフォードという戦略の元、世界120カ国で販売されることを前提としたクルマ作りで開発されたモデル。日本市場でも上はメルセデスAクラス、BMW1シリーズなどから、下はVWゴルフまで、数多くのライバルが存在する。そんなマーケットに投入されるわけだから、当然ながら個性もさることながらライバルを圧倒する特徴が必要となる。例えばそれはメルセデスに見られる高級車のレッテルだったり、BMWのようにセグメント唯一のFRといったメカニズム上の特徴だったりする。
スタイリッシュでスポーティーな印象の強い外観。後席の居住性も良く、ラゲッジスペースも広い。
2リットルNAの直噴4気筒エンジン。エンブレムが表すほどスポーティーな印象ではなく、むしろ高級車然とした走りを持っている。
ダッシュセンターのオーディオデザインはエクスプローラーと共通。シフトレバーにはマニュアル操作用のスイッチが付いている。
新しいフォーカスは2㍑直噴の直4DOHC170psという高性能なエンジンと、パワーシフトと名付けられたデュアルクラッチの6速トランスミッションを持つが、直噴にしてもデュアルクラッチにしてもすでにライバルの間で使われている技術だから、今さら売りに出来る特別なものではない。しかし実際に試乗してみると、このクルマには大きな武器が存在することが分かった。それはひとクラス上のDセグメントのセダンと比較しても遜色ないほどの卓越した乗り心地である。つまり、ライバルのいるCセグメントのハッチバックというジャンルの中では文句なく最良で、路面からのノイズの遮断、振動の遮断、ハーシュネス(突き上げ感)の遮断など、どれを取っても素晴らしい出来栄え。さらにトルクベクタリング・コントロールというアンダーステアを軽減する制御システムと、良くチューニングされたサスペンション のおかげでハンドリングは極めて正確で、いたずらにクィックではないからナーバスな印象も少なく運転が楽だ。ライバルも多いが確かな実力を持つクルマだ。
■全長×全幅×全高:4,370×1,810×1,480mm■車両重量:1,380kg■エンジン:直噴2.0L DOHC■最高出力 kW(ps)/rpm:125(170)/6,600■最大トルク N・m(kg-m)/rpm:202(20.6)/4,450■ミッション:フロア6AT■希望小売価格(税込):2,930,000円
日本仕様はタイで生産がおこなわれ、最上級の仕様が導入される。このためエアロパーツが装備され、リアのスポイラーもかなり大型のものが付く。
photo: Gao Nishikawa,Yoichi Suzuki
text: Takahito Nakamura
special thanks: Ford Japan Limited(0120-125-175 http://www.ford.co.jp)